社会人も参戦!? ラップブームの現場に迫る

週刊?!イザワの目

2016/08/10週刊?!イザワの目


今年に入り、「ラップ」熱が高まっている。

かつては一部の若者たちの音楽というイメージだったが、徐々にその形が変化しているらしい。

「ラップ」の何が、人々を夢中にさせるのだろう。

「ラップ」の大会が開かれると聞き、その現場に潜入した。

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年齢・経験問わず、生き様を表現

7月30日、渋谷のクラブ。スーツにネクタイ、白衣、作業着など、「ラッパー」のイメージとはかけ離れた格好をした人々が集まっていた。「第2回社会人ラップ選手権」予選だ。

この大会の参加資格は「社会人であること」のみで、経験や職種などは不問。この日は会社員、公務員から、社長、農家、三味線奏者など、多種多様な職業に従事する出場者が集まった。年齢も20歳から51歳までと幅広い。出場者は、ステージ上で1対1になり、交互に即興でラップを披露する、いわゆる「フリースタイル」と呼ばれる方法で対決する。

バトル前に名刺交換をするのも特徴的だ。バトルと聞くとコワモテの若者がにらみ合って一触即発というイメージもあるが、そこは社会人。初対面の相手には礼儀正しく、「お世話になっております」だ。

挨拶を終えると、それぞれ仕事のグチや自分のポリシー、はたまた取引先への"ディス"りなどを、リズムに乗せてぶつけあう。「中間管理職の苦悩」「福祉業界への思い」「米作りへの情熱」など、そこには「社会人らしい生き様」が感じられ、たった8小節のドラマに観客はぐんぐん引き込まれていく。

審査方法はライム(韻)、ロジック、生き様の3点。ただ単にラップの巧拙を競うだけでなく、社会人ならではの"責任"などをラップで表現し競うというのが重要なポイント。この日、72人が出場し、3人がMVPとして選出され本戦へ、さらに後日審査を経て通過した13人を合わせた16人(エリートサラリーマンからフリーターまで)が9月4日の本戦に出場し、多彩な生き様をぶつける。

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▲名刺交換の後、白熱したバトルを繰り広げた社会人ラップ選手権。「ラップは名刺交換と一緒でコミュニケーションツール」と語り、なかには対戦後に「商談しましょう!」と誘う出場者もいた。

なぜ今? 今後はどうなる? ラップブームについて聞いてみた


X.png「社会人ラップ選手権」の主催かつ審査員を務める、大手広告代理店クリエイターX氏に話を聞いた。

―社会人ラップ選手権は、いろんな職業の方が出場していますね。ラップにその生き様をぶつけている時は迫力満点ですが、バトルが終わると、みなさん、すっきりした表情をしているのが印象的でした。

X:ラップを通して「言いたいことを言えている」のでしょうね。そもそも「ヒップホップ」というのは、黒人を中心にストリートで生まれた文化で、当時の社会的弱者の人々が自分たちの存在を示すための表現方法だったわけです。現代の日本に置き換えてみると、テレビ番組は少しでもふざけると叩かれるし、SNSは一見なんでも言えるように思えますが、過激な書き込みはすぐ炎上する。皆「言いたいことが言えない」状態。特に社会人は、立場や責任があって、そうなりやすいのではないかと思います。

そんな現代において、「ラップ」は「言いたいことを言う」方法として、いいエクスキューズになっているのだと思います。話し言葉で人を罵ったり、愚痴を言ったりするのは抵抗がありますが、ラップのリズムに乗せれば許されてしまうところがある。ラップをしている時は敵でも、バトルが終わればお互い握手して笑いあう。そんなスタイルが、現代のいいデトックスになっているのでしょう。今回の予選同様、9月4日の決勝はいろいろな社会人の仕事や人生についての本音が聞けると思います。自分で言うのも何ですが、めちゃめちゃ熱い、おもしろいイベントになると思うので、少しでも興味を持ってもらえたら現場に足を運んでほしいですね。

―ここ1年くらいで「ラップ」のファン層の裾野が広がった気がします。この選手権も、ラップに最近興味を持ったという人が出場していましたね。

X:そうですね。ブームの火付け役は『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』(BSスカパー!)、そしてやはり『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)でしょう。あと、ライムスター・宇多丸さんの『ウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)の影響も大きい。これらのメディアの力によって、市民権を得たのだと思います。そもそも日本人というのは昔から『言葉遊び』が好きです。短歌でも韻を踏んだりしますよね。その点で実はラップも共通点が多く、親和性が高い。日本人には縁遠いものと思いがちですが、意外とそうでもないんですよ。

―トヨタ(NOAH)、日清食品(どん兵衛)、コカ・コーラ(ファンタ)など、大手企業でもCMやバズ動画でラップを使った例が増えています。なぜ企業はプロモーションにラップを使うようになったのでしょうか?

X: 『フリースタイルダンジョン』の成功も大きな要因ですが、それだけではありません。私なりの分析ですが、他に3つの要因があると思います。

まず、かつて中高生時代にラップを聴いていた人たちが、企画の現場で決定権を持てる年代になってきたこと。

次に、メディアを通じて、ラッパーのバックグラウンドやキャラクターを理解する機会が増えたことです。また、キャラ立ちしているラッパーも増えました。テレビCMでは、説明せずに伝わるコミュニケーションスピードが大切なので、明確なキャラが立っていると起用しやすいのは当然ですよね。

最後に、CMもラップも「短い時間で面白いことを言う」という、共通点があることです。ラップはライム(韻)やフロウ(歌い方)などさまざまな手法を使って面白さを表現することが求められますが、CMも15秒、30秒という時間の制約の中で、表現を工夫して「なるほど」と思わせなければなりません。つまり両方ともユーモアが大切なんです。だからラップはCMと相性がいいのでしょう。

―ラップ番組の人気、企業CMでの採用、日本各地でのサイファー(集まって即興でラップをすること)の開催、そして今回の社会人ラップ選手権など、さまざまなところでラップが盛り上がり、メディアで特集が組まれることも増えています。今後、このラップブームはどうなっていくのでしょうか?

X:実は今のブームは「ラップミュージック」そのものの人気というよりも、その中の一部である「フリースタイル(即興ラップ)」ブームにとどまっていると思います。音楽的にみれば「フリースタイル」によるバトルが面白がられるだけでなく、楽曲そのもののヒットなども大切だと思いますね。とはいえ、「フリースタイル」がきっかけで「ラップって面白そう」だと思ってチャレンジしてみる人が増えていくことで、「ラップ」全体が盛り上がっていけばいいと思います。だからこそ、我々は誰もが簡単にラップにチャレンジできる場所をつくり続けることで、この国の文化として根付かせることができれば、なんて思っています。志は高い方がいいですからね!

【第2回社会人ラップ選手権(本戦)】

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日時:2016年9月4日(日)開場17:30開演18:00

場所:新木場1stリング(〒136-0082東京都江東区新木場1-6-24)

主催:社会人ラップ選手権実行委員会

出場者:予選を勝ち上がった16人

審査員:DOTAMA、平嶋夏海、辛酸なめ子、大手広告代理店社員、他1人

チケット購入: Peatixにて、前売り券¥3,000、当日券¥3,500(いずれも別途、1ドリンク代¥500-)で販売中。

※前売り券完売の場合は当日券販売はなし

詳しくは社会人ラップ選手権 公式サイトhttp://shakaijin-rap.jp/

チケット購入サイト Peatix: http://rap02honsen.peatix.com

Report by MARIKO TAKASU, SHINTARO NOSHIRO, NATSUKI MASE

この記事を書いた人

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Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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