らしい大学広報を求めて。津田塾大学『plum garden』の秘密

週刊?!イザワの目

2016/06/16週刊?!イザワの目

柔らかで温かな写真に引き込まれ、訪れた先は、「秘密の花園」ならぬ『plum garden』。その名が指すとおり、津田「梅」子が創設した津田塾大学(以下、津田塾)のオフィシャルウェブマガジンだ。津田塾を彩る四季折々の風景や、教員、学生、食堂のメニューなどが収められた写真の数々は、学内の雰囲気や、そこで過ごす人々の空気をもうまく切り取っている。この世界観をなぜ作り出せるのか。それは、同マガジンの編集を学生たちが手がけているからだ。今、学内外から注目される『plum garden』の秘密に迫った。

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『plum garden』編集部のみなさん。左から校閲局長・相川 真菜(英文学科3年)さん、副編集長・金高 真輝子(英文学科3年)さん、編集長・大橋 実結(国際関係学科3年)さん、広報局長・伊藤 美穂(英文学科2年)さんと、『plum garden』創設の立役者の一人、英文学科准教授の郷路拓也先生。

"公式"を学生にゆだねる

2014年4月、新しい大学広報のあり方を目指して、津田塾の各学科の教員と企画広報課の職員を集めたワーキンググループが立ち上がった。大学の基本情報が網羅され、カタログ的な役割を担っている公式サイトからは漏れてしまうが、魅力的な情報をどのように読者に届けるか模索した結果、『plum garden』(http://pg.tsuda.ac.jp/)が生まれた。

公式サイトとは異なり、情報は断片的でいい。その代わり、サイトを訪れた人が津田塾のキャンパスライフを疑似体験できるような、親しみやすいコンテンツを継続的に発信していこうと考え、サイトの編集者に学生を抜擢した。

「プロに外部発注している大学もありますが、それだと外部の人から見た他人行儀な大学の姿になってしまう気がしたんです」と、『plum garden』創設の立役者の一人、英文学科准教授の郷路拓也先生は言う。親しみやすいコンテンツづくりは、学生たちの母校愛にかけることにした。

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学生主体で運営する津田塾のオフィシャルウェブマガジン『plum garden

津田塾生らしさが運営のカギ

しかし、編集部員として集まった学生たちはもちろん素人。そこで郷路先生たちは、編集部員に向けて講習会を繰り返し行った。

「津田塾の学生は"自主性"があると、長年学生と向き合って感じていました。ですから、ある程度大学側でシステムのコアをつくってあげれば、必ず自立的に運営に取り組むと、確信めいた思いがありました」と企画広報課の斉藤治人さん。記事の書き方や写真の撮り方、レイアウトの方法など、コンテンツをつくる上で必要となる基礎を丁寧に伝え、学生たちの下地を整えた。

しかし、それだけで『plum garden』の運営がうまく回ったわけではない。大切なのは、定期的かつ継続的に、一定品質のコンテンツを生み出す仕組みだ。その仕組みを編み出したのは学生たちだった。「最初は編集部員が60人もいて、それぞれのポテンシャルだけで記事を書いていたので、どうにも回りませんでした」と振り返るのは、2代目編集長の大橋実結さん。よりよい運営体制やコンテンツづくりを目指して、彼女自身、プロの編集者がどのようにコンテンツをつくっているのかを学ぶべく、公開講座に参加したり、ウェブサイト編集部のインターンに行ったりと自主的に情報収集をし、『plum garden』の運営の参考にしたという。そんな学生たちが何度も話し合いを重ね、たどり着いたのが、写真局、校閲局そして広報局の3つの局に編集部を分けた現在の体制だ。それぞれの部員がいずれかの局に属し、その仕事に責任を持ちながら、記事自体はみんなで企画を出し、全員が順番に担当する。まさに大学側が感じていた、津田塾の学風である"学生の自主性"が今の体制をつくり上げたのだ。

愛着がシェアのハブとなる

記事の更新は週に1回。毎週の企画会議で部員全員が企画書を出しあい、ディスカッションで決めている。一般的にWEBサイトの読者獲得を考えた時、検索からの流入を大きな柱として考えがちだが、あくまでこだわっているのは口コミ。SNSでシェアやリツイートされることでの広がりを目指している。

そこでまず、津田塾に愛着を持っている在校生や卒業生がハブとなってシェアしたくなるコンテンツが入り口になると考えた。名物先生のインタビューや、津田塾生にとってなじみ深い校舎を特集した「探検!ハーツホン・ホールの地下室を探せ!」などの探訪シリーズは狙い通りヒット記事に。発足当初は記事を毎週執筆するだけで精いっぱいだったが、今ではどんな記事やタイトルにしたらPVが伸びるかまで想定して書くようになっている。今後は、「学内外の人が『この記事面白い!』と思ってサイトに訪れた時、実は発信元が津田塾大学だったと気づいてもらえる記事づくりを目指したい」と大橋編集長は話す。

『plum garden』のPVは、1年前と比較して2倍以上に伸びたという。同マガジンのデザインやコンテンツはウェブマガジンの枠を超え、大学の広報誌やガイドブックにもスピンアウトし始めている。

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人気コンテンツ、津田塾探訪シリーズより「探検!ハーツホン・ホールの地下室を探せ!」

<記者の目>

実は、今回取材を担当した私自身も津田塾の卒業生だ。最も印象深かったのは、学生の自主性の高さと、教員と学生の信頼関係の強さ。大学公式のウェブサイトの運営を、学生に任せるという決断をし、それにきちんと応え続ける学生の姿に感銘を受けた。いわゆるマンモス校ではない、学生一人一人に目が行き届く大学だからこそ踏み出せた大きな決断だったと思う。

志願者数確保に向けて、各大学が広報に注力し始めている。その手腕で話題を呼ぶ名物大学が増えてきている一方で、その手法をそっくりまねようとする大学も少なくない。規模もカラーも異なるのに、必ずしも同じ手法を取り入れることが正解とは限らないのではないだろうか。津田塾が豊かな自然に囲まれた立地と、母校愛を持った自主性の高い学生という「資産」を生かしたように、学風に合った方法を模索し、果敢にチャレンジすることが、「共感」を呼ぶ秘訣だと思う。

『plum garden』を初めて訪れた時、地味で真面目だと思っていた自分の母校に対する認識が一変したことが忘れられない。在学時には気づかなかった大学の良さが凝縮されたサイトを見て、改めて母校を懐かしく思い、同級生に思わず『plum garden』のことを伝えた。きっと『plum garden』はこうやってファンを増やし、口コミを広げていくのだろう。

Report by Sachiko Omori

この記事を書いた人

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Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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