オモシロ・コンテンツを生み出し続ける方法を、お笑いに学んでみました。

週刊?!イザワの目

2016/03/24週刊?!イザワの目

「話題になりたい」「バズを生むような面白い施策をやってみたい」。生活者の誰しもが"表現者"や"情報発信者"となり得る今、多くの企業が人々の興味関心を惹きつけるために、"オモシロ・コンテンツ"を生み出そうと苦心している。そこで、日々"オモシロ"に携わり、生活者を惹きつけてやまないお笑いライブを企画・運営している、お笑いライブ・イベント会社K-PRO代表 児島気奈(こじま・きな)さんに、"オモシロ"に関わる質問をぶつけてみた。

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K-PRO代表  児島気奈さん

すべては芸人のため

2004年に創設したK-PRO。当初は月に2回ペースでお笑いライブを開催していたが、2011年ごろからほぼ毎日、今は月に40~50本を開催している。

-ライブ会場を所有していない中で、毎日1本以上の開催は大変なことですね。なぜ、それほど頻繁にライブを行うのでしょうか?

児島気奈代表(以下、児島):年々、芸人さんの数は増えています。せっかくたくさんの芸人さんがいるなら、こちらも芸人さんが活躍する舞台をたくさん提供してあげたかったんです。グローブ座や赤坂ブリッツなど、普段お笑いをやらないような箱でライブを開催したこともありますが、それも、芸人さんに大勢のお客さんの前でネタをやる快感を味わってほしいという思いがあったからです。

芸人が快感を味わい、楽しそうにネタをする様子がお客さんにも伝わり、一体感のあるライブを生み出しているに違いない。

お客さんを飽きさせない

お笑いライブを企画する上で重要なのは、"芸人さんとお客さんが一緒に楽しめる場を提供できるかどうか"。お客さんをライブに呼び込み続けるためにどんなことを意識しているのだろう。

-お客さんを惹きつけ続けるためにはどうしたらいいのでしょう?

児島:ともかく飽きさせないことです。一度、お客さんがたくさん入ったライブだからといって、全く同じ演者、同じ内容で再演してもお客さんは来ません。演者は必ず入れ替えるようにしますし、ライブの企画もそのつど変えます。アイデアのヒントにしているのは、プロレスやアイドルなど、お笑いじゃない、他のエンターテインメントです。お笑いに限らず、他のジャンルの人たちがお客さんに対して何を仕掛けているのかは気になりますし、良いなと思うことはどんどん取り入れていきたいと思います。

同業者の動向をチェックすることは、お笑いにおいても重要であるようだ。

時事ネタがウケない!?

お笑いで多く見られる"時事ネタ"。芸能人の結婚や、そのとき話題になっている社会ニュースをいじり、お客さんの笑いを誘う。そんな時事ネタが、最近お客さんにあまりウケなくなってきたという。

-時事ネタがウケづらい、というのは意外です。お客さんに何が起きているのでしょうか?

児島:特に若いお客さんは、ソーシャルメディアの自分のフィードに上がってくるような、自分が興味のあるニュースしか見ようとしません。また、その好みはお客さんによってバラバラです。なので、いわゆる王道ニュースや社会派の大きなニュースを漫才でいじっても、そもそもお客さんがそのニュースを知らなかったりします。『いや~、この前タレントの○○さんが結婚しましたね~』と言っても、お客さんから『へ~』という反応が(笑)。これからそれをいじろうと思っても、ベースを知らないんじゃウケづらいですよね。

したがって、最近の芸人は時事ネタに頼らず、インターネットやツイッターを駆使して、大きな話題になっていなくても、笑えそうな小ネタや新しい情報を積極的に収集し、自分たちのネタに取り入れる人が多いようだ。お笑いの場においても、企業の広報・マーケティング活動同様、情報拡散までを視野に入れてコンテンツを作る動きが広がっている。

3分が限界

YouTubeなどの影響で、自分が見たい動画をいつでもどこでも見られる"Always on"の時代となった今、自分が知っている芸人ならまだしも、知らない芸人のネタを見るのは3分が限界だろうと児島さんは指摘する。最初の3分で「つまらない」と感じたら、次の動画。その動画もつまらなかったら、また次の動画...。コンテンツを選びたい放題の時代になった今、お笑いに限らず、人々のコンテンツに対する評価のハードルはますます上がっている。

-飽きさせないようにするには、短い尺の動画を作っていくことが重要なのでしょうか?

児島:短い動画を作り続ければいいかといえば、そうでもありません。YouTubeで強いのは歌ネタなどの"尺はそこそこあるがインパクトの強いネタ"です。最近では、オリエンタルラジオ(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)さんの『PERFECT HUMAN』が大ヒット中ですが、いかに若い人たちに『ねえ、あれ見た?』と言わせるインパクトをコンテンツ(ネタ)に付加できるかが、大切なんだと思います。

自分たちのネタが、知らないところでパロディ化されたり、まねされたりすることでブームは生まれる。そうしたブームを生むために、ただ目の前のお客さんを笑わせるだけでなく、YouTube等の動画視聴者まで意識をしてコンテンツ(ネタ)作りをする動きがお笑い界でも広がりそうだ。

お笑いブームは、絶対くる!

「お笑いブームは終わった」と言われて久しい。"エンタの神様"をはじめとしたネタ番組が相次いで終了し、テレビで若手芸人を見る機会は以前に比べて少なくなった。

-お笑いブームの再燃はあるのでしょうか?

児島:お笑いブームは絶対また来ます。でも、そのブームは、テレビから発信されるのではなく、劇場から徐々に広がっていくブームになると思っています。テレビは尺が限られていて、芸人のある特定の能力しか見せる機会がないけれど、舞台では芸人さんがもつ"芸人力"を存分に発揮できると思います。そういった舞台のパワーを、再認識されているメディア関係者も多いようです。

お笑い芸人の地位向上を目指している児島さん。これからは、若手芸人がどんどん台頭し、お笑い界に新風を巻き起こしてほしいと語る。しかし、お笑いは、良くも悪くも"こうでなくてはいけない"という、脈々と受け継がれた文化が根強い。そんな慣習をはねのけて、児島さんは"新しいことを、どんどん受け入れる柔軟性がお笑いにも必要"と指摘する。そのためにも、"芸人力"を磨くことのできる舞台という場を芸人側にもどんどん提供していきたいと考えている。

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今、お笑いは劇場が熱い。(写真=K-PRO提供)

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万人に共通してウケるネタが無くなりつつある今、"オモシロ"の専門家である芸人たちから、ネタのつくり方や、与えられた尺の上手な使い方を学ぶのも、広報活動のアイデアを模索する良い手ではないだろうか。いつもとは違った視点でお笑いライブを見るのも面白いかもしれない。自分が本当に面白いと感じることにこそ、"オモシロ・コンテンツ"を生み出すヒントがあるはずだ。

text=SHINYA TAKIMOTO

photography=RURIKO IMANISHI

この記事を書いた人

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Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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