超地元密着型雑誌の「おもろい」コンテンツづくりとは―Meets編集長インタビュー

週刊?!イザワの目

2015/10/29週刊?!イザワの目

ネットやSNSでどんな情報でも集められるようになった今も、絶大な人気を誇る雑誌がある。京阪神エルマガジン社が発行する、関西の街雑誌「Meets Regional(ミーツ・リージョナル)」だ。地元住民が楽しめる街の情報を、独自の視点で紹介するディープな誌面は、他のエリア情報誌とは一線を画し、関西外にもファンが多い。

その超・地元密着の情報をどのように集め、どう調理し、どう発信しているのか。苦境と言われる雑誌界において、創刊25周年を迎え、まだまだ元気な「Meets Regional」が読者をひきつける秘訣を、編集長の竹村匡己氏に聞いた。

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11月等の表紙は松尾伴内さんでファッション特集。10月号は鶴橋・玉造特集だった。

情報誌でもグルメ誌でもない

-Meets Regional(以下ミーツ)について教えていただけますか?

ミーツは、「街で遊び、暮らす。街の人々とのコミュニケーションを深める」をコンセプトに1989年12月に創刊した月刊誌で、昨年25周年を迎えました。誌面の切り口は「街」に加え、「おもろい」という要素を意識しています。

-「おもろい」とはどういう意味ですか?

例えば今年の10月号は「鶴橋・玉造」特集でしたが、表紙は立ちスタイルの焼き肉屋です。ここの店主は男前なんですが、経歴がちょっと変わっています。元地下鉄職員で、あるとき突然韓国にはまり、現地の焼き肉スタイルに出会って、「焼き肉といえば鶴橋」と思い立って、いきなり鶴橋で焼肉屋を始めたんですよ。ムチャクチャですよね?(笑)僕らはこういう情報を大切にしています。普通の店情報としては、店主の経歴なんて、余計だと捉えられるかもしれないですけど、ストーリーとしては面白いじゃないですか。単に特集を組むエリアの飲食店だけの紹介ではなく、店主の人柄や、集まったお客さんの雰囲気、他にも、そこの住人なら誰でも知っているご当地有名人など、読者の人に「おもろい」と思ってもらい、興味を持ってもらえるような視点を大切にしています。

-ある意味、情報誌というカテゴリに収まらない雑誌ですね。

読む人の判断なので、何ともいえないんですが、単なるエリア誌・情報誌とは違うと思います。かといって、グルメ誌でもカルチャー誌でもない。そのあたりはモヤっとしていて、説明するのが難しいのですが、「街あっての雑誌」というところはすごく意識しています。

決め手は雰囲気

-毎月の特集はどのように組まれるのですか?

編集部は編集長を含めて8人です。そのうちの1人が班長としてその号を仕切り、残りのメンバーで3班を作り取材にあたります。班長は入れ替わりです。

-班長が特集を考えるのですか?

いえ、1年分の特集をある程度決めているので、それを割り当てます。ただ企画内容が入れ替わることもあります。先ほどの10月号は当初「鶴橋」まででしたが、途中で「玉造」を付け足しましたし、次の11月号はもともと「スポーツ」の予定でしたが、松尾伴内さんを表紙にした「ファッション」になりました。

-大きく変わりましたね。

松尾伴内さんは完全に僕の趣味ですね。今のファッション業界のトレンドは「ジェンダーフリー(男女兼用ファッション)」ですよね。「ジェンダーフリー」といえば「『神戸コレクション2015SS』に"男女兼用スタイル"で登場した松尾伴内さんだ」(※)という発想につながり、すぐに決まりました。東京では絶対にやらないだろうということも企画を後押ししましたね。

※松尾伴内さんは、明石家さんまさんが、唯一関西で公開収録を行っている、毎日放送「痛快!明石家電視台」で、たびたび女性用の乙女チックな衣装で登場している。さんまさんのツッコミに対して「男女兼用でございます」などと答えるのがお約束のネタ。

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-東京発の雑誌や情報との対抗意識はありますか?

関西でやっている以上は、関西でおもろいことをやりたいですね。切り口も、なるべく全国誌に載ってないようなものを選んでいます。東京と関西が求めるものはまた違ってくると思うので。

-企画選びにおける決め手は何ですか?

「雰囲気」ですかね。答えはありません。いつも正しいかどうか分からないですからね。

3倍、現場に行く

-読者からの反応が良い特集は何ですか?

エリアものですね。最近のものでは「梅田」や「京都」などです。班長を中心に候補の店を下見し、絞り込みます。誌面で紹介する3倍くらいの店に行きますね。基本的に普段飲みに行っている中から、店の情報を聞くことも多いですが、情報がなければローラー作戦で、しらみつぶしに当たります。泥臭いですよね。グルメサイトの口コミや、地元のキーマンに接近して、一緒にハシゴしながら地図を埋めていくことも多いです。

-大変ではないですか?

現場100回ではありませんが、自分でその場に行って接してみた方が、おもしろいですし、新しい発見もあります。他の誰かが開拓してこなかったところの魅力を見つけ、それを伝えられる。やっている方にとってはとても楽しいです。

-普段から毎日飲みに行きますか?

編集部的には、飲みに行ってないのはダメですね(笑)。

-他の媒体や企業のリリースなどを情報源にすることはありますか?

内容によりますね。街の話題は、普段の交流や自身の足で「泥臭く」情報を仕入れてくることが多いので、他のメディアで登場する頃には、すでにミーツで紹介済みだったりします。例えば2011年に、当時誰も注目していなかった天満(※)を扱った「天満特集」をしたところ、今は「食都」なんて呼ばれています。また最近は、今年6月に特集した大正区(※)もテレビに取り上げられています。一方で、テレビからの情報収集はそこまで重視していないですが、あまり気にしなさすぎても世間一般におけるトレンドを知るのが遅れがちになります。そういった意味では、商品やイベント情報だけでなく、背景や今のトレンド情報などがリリースに書かれていれば、参考にすることはあります。例えば、CMに登場するタレントさんに関する情報として、どうしてその人が今人気なのか、とか、意外なもの好き、といった情報などですね。

※天満(てんま)は、JR大阪駅から大阪環状線で東にひと駅隣のエリア。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年)の舞台の一つ天満市場を擁する。

※大正区は大阪市西部に位置する区の一つで、区全体が運河に囲まれた島状の地形となっている。沖縄県からの移住者が多かったことから、沖縄料理や沖縄食材を扱う店が多く「リトル沖縄」の異名を持つ。

ミーツは街と一心同体

-創刊25周年を経て、どのような意識で誌面作りをされますか?

しっかりと読んでいただけるよう、これからも丁寧に作ろうと思っています。以前、読者アンケートを取った際、半数以上の方がほぼ毎月購読していただき、創刊当時の頃からの読者もいました。当時20代だとすると今では40~50代くらいになっていますね。そこに合わせすぎる意識はありませんが、上の方々も白けず読めるものにというのは心がけています。アホすぎず硬すぎず、クスっとさせながらも「実は賢そうやな・・・」と思われたいですね。

-今後の展望を聞かせてください。

街あってのミーツだと思うので、ミーツが盛り上げるというよりも、街が元気であってほしいですね。ミーツは、関西の街と一心同体だと思っています。街の人、街に暮らす人、街で遊んでいる人がおもしろいと思えるようなミーツを続けていきたいし、それが伝わればと思います。

(聞き手:アイシ、ノセ)

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■プロフィール

竹村 匡己(たけむら まさき)さん

Meets Regional編集長

1975年、京都市生れ。2001年に京阪神エルマガジン社に入社後、「Lmagazine エルマガジン」、「Richer リシェ」、別冊編集室の編集を経て2014年12月から現職。

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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