ゆるキャラ人気のその先へ。くまモン特集2015。

週刊?!イザワの目

2015/02/12週刊?!イザワの目

日本で知らない人はいないといっても過言ではないほどの人気ぶりを見せる、くまモン。成功の秘密や、人気になるまでの下積み時代を紹介する特集は、これまでも数多く組まれましたが、くまモンの"未来"に関する特集はありませんでした。くまモンの成功の秘密は、未来を描く力にこそあるのでは? そこで今号では、くまモンの"今"をご紹介すると共に、"未来"に向けてどんな夢を描いているのか、その展望を明らかにします。きっと企画に役立つヒントがあるはず。

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「くまモンファン感謝祭2015 in OSAKA」の様子(2/7)

ファンと熊本の懸け橋に「くまモンファン感謝祭」に見るくまモン人気の広がり

九州新幹線開通の2011年3月12日に発表され、熊本県の営業部長兼しあわせ部長として活動するくまモン。愛くるしいキャラクターで、その人気と知名度はどんどんと高まり、今では"ご当地くまモン"が47都道府県全てで発売されるなど、全国各地で不動の人気を獲得している。そのファンの広がりを象徴するイベント「くまモンファン感謝祭2015 in OSAKA」が2月7日(土)、8日(日)の2日間、西梅田スクエア(大阪市北区)で開催された。

現在、くまモンのファン感謝祭イベントは、東京、大阪、福岡の3都市で開催されており、大阪での開催は九州新幹線開通当初の2011年から始まって今回で5回目。くまモンの人気を表すように、老若男女を問わず、多くのファンが訪れ、今年は、2日間で5万7千人のファンが来場。昨年開催時の5万人を上回るなど、くまモンのファン層の広がりを感じさせるイベントだ。当日は、くまモンだけでなく、ゲストとして各自治体から「お友達」のご当地キャラクターたちが駆けつけ、ステージイベントに登場。子どもとくまモンの触れ合いイベント「くまモンと遊ぼう!」コーナーでは、くまモン見たさに多くのちびっ子たちが集結。くまモンは、子どもたちと一緒に写真撮影を行うと、一人一人と握手をして回った。両親とよくゆるキャライベントに行くという大阪府から来場した男の子(8)は、「ゆるキャラの中で一番好きなくまモンに会えてうれしい」とご満悦だった。

また、ステージ周辺では、熊本県内の自治体や業者による物産展が行われた。物産テナントとして参加し、熊本県で創業70年の黒ホルモン店を営む男性は、「今回、創業以来、初めて県外での出展を行った。くまモンが熊本を有名にしてくれたおかげで、僕たちも勇気が出た」と語る。当イベントを主催・運営する熊本県大阪事務所次長の浦田美紀氏によると、くまモンとファンとの交流だけではなく、「熊本の観光・物産にも貢献できるイベント」を目指しているということで、くまモンに会いたい一心で集まるファンと、熊本県の名産品などのPRを行う出展者とを繋げることも、営業部長くまモンの役目だという。

今年からの新しい試みとして、来場者とくまモンの「赤いほっぺ」シールでイベントを盛り上げる「ほっぺ隊」を実施。くまモンの赤いほっぺは「トマトや馬肉など、熊本の名産品を象徴するもの」(浦田氏)であり、それを来場者の「ほっぺ」につけていただくことで、熊本県=赤のイメージを訴求した。さらに、くまモンがプリントされたサンバイザーを配布し、会場をくまモンの顔でいっぱいにすることで、会場の一体感も醸成している。「サンバイザーは、パンフレットと違い自然に受け取っていただけるため、くまモン≒熊本の情報発信としてすごく適している」(浦田氏)と、そのPR効果にも期待している。

「熊本県のPRにつながること」を念頭にさまざまな取り組みを行うという大前提があるからこそ、単なるファンイベントにとどめず、熊本に繋がる仕組みを作る。多くのファンに愛され、熊本県の営業部長兼しあわせ部長の名に恥じない働きぶりを、この「くまモンファン感謝祭2015 in OSAKA」で見ることができた。

新たなブランド価値創造に企業も注目。ゆるキャラにとどまらないくまモンのポテンシャル

くまモンの仕事は、熊本県のPRを目的としたイベント出演や、ファンの育成、ファンとの交流にとどまらない。企業とコラボレーションし、県産品の販路拡大や産業振興にも直接寄与している。これまでにもたくさんのメーカーと協力し、オリジナル商品を展開してきた。中には、各社のブランディングにも寄与するような取り組みも始まっている。

2015年1月5日、マガジンハウスが発行する雑誌「Tarzan」のダブル表紙の裏面(一般にいう裏表紙または表4のこと)に、真っ赤なアディダスの特注ジャージに身を包んだくまモンが、「Tarzan」のロゴと共に大胆に登場した。

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1/5に実施された「Tarzan」発売イベント。 左)大田原透編集長

これは、「熊本にたくさんある健康でおいしい『赤い』食材を通して、日本の皆さんをもっと元気に」というコンセプトの下、2014年秋から展開されている熊本県の新しいキャンペーンのひとつで、メタボ疑惑をかけられたくまモンのダイエットをサポートするためにアクティブライフスタイル雑誌の「Tarzan」が協力を申し入れ、ダブル表紙の裏面と中面6ページにわたる特集を組んだもの。同キャンペーンには、「Tarzan」の他にも「タニタ」「アディダス・ジャパン」「日本コロムビア」などが協力している。

「Tarzan」編集長の大田原透氏は、今回のコラボレーションについて「掲載号の特集『人生最後のダイエット』との親和性も高く、くまモンとのダブル表紙の話題性も高かったため、新規読者層の取り込みにも成功した一冊。日本の人々の体力向上を目標に掲げる『Tarzan』にとって、楽しく読者に向き合う2015年最初の一冊になった」と語る。くまモンという実在する人気キャラクターを起用することで、発売に合わせたイベントも実施することができ、テレビを中心に話題が拡散したことも「普段『Tarzan』を手に取らない女性層への訴求ができた」とする。雑誌の新たなブランディングにつながったようだ。

くまモンとコラボレーションすることが、企業そのものPRやイメージアップにつながる。誕生当初の目的である、熊本県のPR、県産品の販路拡大、産業振興を超えた存在感を確立しつつあるくまモン。なぜくまモンは、いち"ゆるキャラ"を超えられたのだろう。そして、"ゆるキャラ"界のパイオニアとして、くまモンは今、何を目指しているのだろう。くまモンの「育ての親」の一人と言われる、熊本県庁 商工観光労働部 観光経済交流局 くまもとブランド推進課の課長、成尾雅貴氏に話を聞いた。

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熊本県庁 商工観光労働部 観光経済交流局 くまもとブランド推進課 課長 成尾雅貴氏

育ての親、成尾雅貴氏に聞く。くまモンの野望?! 熊本県が描く、100年後の未来。

―くまモンの活動は非常に精力的というか積極的ですね。いろんなことにチャレンジしている印象です。

成尾氏:サプライズをモットーとするくまモンですから、常に新しいことにチャレンジしていかないと、くまモンらしくないですよね。

―くまモンらしい活動をするための、活動指針のようなものはあるのですか?

成尾氏:最近では、"サプライズ"を含む「3つのS」をキーワードにしています。一つ目がSurprise(サプライズ)、二つ目がStory(ストーリー)、三つ目がShare(シェア)です。

"サプライズ"とは、予想もしなかったような「ハッピーなびっくり」をプレゼントすること。ですから、イベントであっても、企業とコラボレーション商品の開発であっても、常にファンの方やお客様に楽しんでもらえる、喜んでもらえることを意識しています。"ストーリー"は、なぜその活動をやるのか、その背景や意味をしっかり組み立てて行うということです。熊本を意識しつつも、ファンの方やお客様が、共感したり納得するようなエピソードがそこにあれば、口コミやメディアで自然と波及していきます。"シェア"は、日本流で言うと「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」みたいなことです。主に商品開発の際に当てはまるかもしれませんが、一緒に商品を開発した企業さんにとっても、熊本にとっても、それを手にしたファンの方やお客様にとってもハッピーになる、みたいなことですね。

―くまモンは昨年、ハリウッド進出も果たしていますが、これからは世界での活動も視野に入れていますか?

成尾氏:これまでも、くまモンは世界のいろいろなところに行っています。アジアが中心だったのですが、2013年にはドイツ・フランス・イギリスのヨーロッパ3カ国歴訪の旅がかないました。海外でもくまモンは大人気で、ノンバーバルな魅力というか、きっとあの動きが人を魅了するんでしょうね。機敏ではあるけれど、どこか垢抜けなくて。あ、本人が聞いたら怒るかもしれません...。

くまモンには、世界中で愛されているミッキーマウスやハローキティのように、息長く、100年後も愛されるキャラクターになってほしいんです。熊本の人が世界を旅して、日本の熊本から来たと話した時に、「あぁ、くまモンで有名な熊本ね」って言ってもらえるくらい、世界中の人にくまモンを知ってもらいたいと思っています。ミッキーやハローキティはあくまで夢の国の住人ですが、くまモンにはリアルな故郷があります。それが大きな強みだと思うんですよね。

―世界中の人がくまモンを知る、それは大きな夢ですね。

成尾氏:もう少し近い将来のことをお話しすると、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。そうすると世界中から東京に人がやってくるわけです。東京に来たついでに、きっと世界の古都、京都にはみなさん行くだろうと思います。でも、もう一カ所くらい、日本の地方都市も見てみたいな、となった時に、熊本に来ていただきたいんです。東京、京都の次でいい。でも3番目に熊本を選んでほしいと思っています。あと今の夢は、星に名前をつけることです。星って見つけた人に命名権があるんですよね。もちろん名前は「くまモン星」。くまモンには星にまでなってほしいなと思います。

―壮大ですね。

成尾氏:かなわないと思いますか? でも、こういう話をしていると、どこかで話が舞い込む時がくるんですよ。これは無理だよね、という考えはまったくありません。時々、くまモンの生みの親である小山薫堂さんと、くまモンについて話をするのですが、去年、日本人がノーベル物理学賞をとった時に、「くまモンが目指すならノーベル平和賞ですかね」とお話ししたら、「いいですね~」と言ってくださったんです。「なにバカなこと言ってんの」と否定するんじゃないんですよ。これはまぁ、笑い話かもしれないですが、でも3~4年前に、くまモンにそれは無理だろうと笑われていたことが、今、実現してるんです。楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史さんの言葉に、「月に行こうという目標があったから、アポロは月に行けた。飛行機を改良した結果、月に行けたわけではない」というのがあるのですが、そういうことだと思うんです。だから私も、くまモンが世界で活躍、と大風呂敷を広げたいと思っています。

―くまモンもまだまだ進化する、ということですね。

成尾氏:これまでもそうですが、くまモンの進化というか成長の裏には、本人の自助努力もあります。本人自身が、どうやったら周りを喜ばせることができるかを考え、とても意識しているのです。私たちがマニュアルを作っているのではありません。例えば、よくお話しするのが、後ろを向いていて、くるりと上半身だけ振り返るポーズ。あれは、体育館のような広い場所で、子どもたちが去っていくくまモンに声をかけながら見送っている時に生まれました。体育館の出口までは距離があるので、途中でくまモンが「聞こえているよ!」という感じで、くるりと振り返ったところ、わっと歓声が上がり、それから、この振り返りポーズが定番になったのです。このように多くのイベントに参加していく中で、みなさんが何をしたら喜んでくれるかを強く意識していくことで、どんどんくまモンが成長していったのです。

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イベントで、今やお馴染みとなった「振り返りポーズ」を決めるくまモン

―「第2のくまモン」になりたいと思っている、地方自治体のゆるキャラはたくさんいると思います。なにかアドバイスはありますか?

成尾氏:私たちは特別なことはやっていないんですよ。私たちは縁があった小山薫堂さんの書籍の教えを実践しただけです。物まねに過ぎない。でもやってみたら思いのほか効果が出たので、これはいいなと思い、その足を止めずにいろいろ新しいことにも挑戦してみました。目先の利益じゃなくて、みなさんにハッピーを感じてもらうための仕掛けづくりですよね。扉を開けて踏み出してみたら、こういう世界が見えちゃった。これはもう後戻りできないですよね。こんな楽しいことはないですから。世の中には企画やマーケティングのノウハウ本はたくさんありますよね、読んでおしまいにするのはもったいない。実践してこその企画だと今は思っています。

―夢はまだまだ広がりますね。

成尾氏:そうですね。次回はくまモンもゲストじゃなくて、紅白歌合戦のメインステージに立って歌わないとですね(笑)。

―ありがとうございました。

(原稿:アイシ、マー)

この記事を書いた人

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Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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