低予算でも100万回再生!なぜあのクリーニングCMはバイラルしたのか?

週刊?!イザワの目

2014/05/23週刊?!イザワの目

ヒットを狙って作った動画の再生回数が伸びない、話題にならない。そんな経験をお持ちの方も多いのでは。そんな中、タレントの坂上忍さんが出演した、株式会社ホワイトプラスの宅配ネットクリーニング「リネット」のCM動画『潔癖刑事(けっぺきでか)』が、TVCM放映開始から3日間で100万回再生されるという偉業を達成しました。そこには、今までのCM制作から1歩進んだ「クリエイティブ(CR)×PR」の仕組みがあったようです。ヒットの裏側を取材しました。

「リネットCM動画『潔癖刑事』」

坂上忍さんが30年ぶりに出演した話題のCM動画。

■ストーリー:汚れたものが大嫌いな刑事、それが「潔癖刑事(ケッペキデカ)」、通称「潔癖」。誰よりもキレイを愛し、白黒はっきりさせる正義感溢れる「潔癖」は、『突入の際にはドアノブをキレイに拭く』、『刑事なのに指紋を拭いてしまう』、『ダイイングメッセージはティッシュで丁寧に消す』、『拳銃代わりに腰にはコロコロを装備』など、刑事らしからぬ〝潔癖あるある″行動をしてしまう。

CRの初期段階からPR

本プロジェクトの当初の与件は、宅配ネットクリーニングサービス「リネット」の認知拡大を目指して、タレントの坂上忍氏を起用して何かやりたい、ということだったという。決して大手企業ではなく、予算もない。しかし、事業としての可能性はある。だからこそ、おもしろいことをやって話題化し、成功に導きたい。その思いの下に集まったのが、去年、カンヌライオンズのヤングカンヌ・フィルム部門で日本人として初めてメダルを獲得した、電通第3CRP局の長久允(ながひさ まこと)氏と第5CRP局の佐藤雄介(さとう ゆうすけ)氏の2人と、電通PRの若手PRプランナーの根本陽平(ねもと ようへい)を中心とした、のちの「バズルブラザーズ」だった。

buzzle brothers.jpgのサムネイル画像「バズルブラザーズ」

電通グループを横断して作られた、動画プロジェクトチーム。今回取材した3名の他、本プロジェクトのアートディレクターを務めた川腰和徳氏(電通)とストラテジックプランナーの奥村誠浩氏(電通)等が主要メンバーとなっている。2014年5月発足。

宅配ネットクリーニングというサービスの特性を考えると、せっかく坂上忍さんを起用するならネットとの親和性が高い「動画」を作るべき、この着想と提案が、このプロジェクトの発端だったという。でも電波の枠を大量に買う予算はなく、地上波で認知を取るほどCMとして放映するのは難しい。そこで、地上波で流す量は最小限にし、YouTUBEでのバイラルと、TV番組内での伝播を狙おうと考え、15秒と30秒、そして45秒の動画を作り、記者発表会を実施したのだ。電通PRの根本は、「動画を話題化するためには、動画そのものが面白くて、自走してバイラルしていくことが理想ですが、その火付けのためのPRプランは欠かせないと思います。CRを考える本当に初期の段階から、チームに入れたのが、今回の話題化の最大の勝因だと思います」と話す。

「いやいや、新CMを話題化する時だって、PRプランナーに相談しているよ」と思った人も少なくないだろう。しかし、それってCMプランは出来上がり、いざ撮影する3日前だったりしないだろうか。それでは、日数も限られるし、提案の余地も少なく、必要最低限のPRプランニングしかできない。今回は、CRプランニングの初期段階からPRプランナーが関わったところが新しい試みなのだ。長久氏は、「PRによるディレクションがあったからうまくいったと思う」と話す。ではいったい、どのようにCRとPRが絡みあっていったのだろう。

buzzlebrothers1.jpgのサムネイル画像

左から電通PR根本陽平、電通第5CRP局の佐藤雄介氏、第3CRP局の長久允氏

PR視点で生まれた

「根本君にキーワードがあったほうがいいと言われて生まれたのが、動画の最後に出てくる『さぁ、クリーニングの時間だぜ。』です。刑事の設定なので、事件を解決(キレイにする)する、クリーニングに出す、のダブルミ-ニングになっています」と話す佐藤氏。また、今回採用された『潔癖刑事』の他にもうひとつプランがあったそうだが、決めるに当たり、刑事のほうを推したという。「話題化するには、王道で攻めるか、マニアックに攻めるかの2通りあると思っているのですが、大手じゃないからこそ、刑事みたいな王道の設定のほうが、堂々とした感じが出せていいなと思ったんです。それと坂上さんに役者をしてもらうほうがニュースになるなと思って」と佐藤氏。「細かいところは、潔癖あるある、などのマニアックでシェアされやすいネタを挟んでいます」と長久氏。

これに対し、「視点がすごくPR的なんです」と根本。新進気鋭の企業が王道なことをする、でもその王道をクリエイティブでひっくり返す(刑事なのに潔癖)というのはPR視点でいうInverse(逆説)的な要素で「文脈が作りやすい」。さらに、坂上さんが役者としてたつのも「すごくいい」。「記者発表会では、TV向けには『30年ぶりのCM出演』、映画メディアには『刑事役で主演』という文脈を作ることができたし、キーワードは、さらに『女性関係(の過去もクリーニング)』にも掛けることができて、芸能メディア的にもおいしいコメントを引き出すことができ、複数文脈で設計することができました。あるあるネタも、共感しやすく、SNS等で拡散するいいヒキになったと思います」と話す。

また、メディアプランや制作尺の決定にもPRの視点があったという。大量出稿は難しくても、地上波でCMを流すことにこだわったのは、CMが全く流れないとTV番組で取り上げにくいという、PR視点からくる発想だ。スポットで大量出稿しないなら15秒のみにこだわって制作する必要がなく、最初からディテールにこだわることのできる尺で制作することができる、こういったこともPRが初期段階から入っていた効果と言えるだろう。

CRとPRの掛け算

動画をバイラルさせるために、緻密にPR計画を立てていくのを目の当たりにした長久氏は、その細やかさに驚いたという。「これまで、こうやったらいいだろうという個人的感覚は持っていて、それによるチョイスはできたけど、PR会社はそれを蓄積しているから、知見=データを活かしてクリエイティブのアウトプットの置き方を設計してくれて、まさに人に伝播させるためのプロという感じ。今までは、CRを作った後にPRを託す場合が多かったんですが、それは非効率的。CRもPRも最初から全部一緒に仕事をやったらいいと思いました」と話す。さらに、「PR視点で物事を考えることが、いかにモノを人に伝播させるかという視点として純粋なことなんだっていうことにも気付いたし、まさに今回はCRとPRの掛け算でいい形になりました」と語ってくれた。

佐藤氏は、「作って終わりじゃなくて、人に届けるまでが大切なんだってことに、今回改めて気づいた」という。「クリエイティブの初期段階から、PRと一緒にディスカッションするのはとても大切。自分の作ったCMの記者発表会に行ったのは初めてだったし、最初からPRの視点を持ってやっていたことで、責任感がいい感じに転んで、自分の仕事の領域も広がりました」と話してくれた。

CMや動画をバイラルさせるには、CRの初期段階からのPR視点が欠かせない。今回の成功のカギは、そこにあったと言えるだろう。もちろん、動画のバイラルには幸運も必要だ。クライアントの理解や、サービス内容との親和性はもちろん、露出させるタイミングやストーリーを緻密に設計してもうまくいかないこともある。でもだからこそ面白い。CR×PR、それぞれがプロの仕事をすることで可能性は無限に広がる。バズルブラザーズの挑戦はまだこれからだ。

宅配ネットクリーニング「Lenet」/『潔癖刑事』スタッフリスト

総合プロデューサー/クリエイティブディレクター/HaruHaru(ニーシーズ)

チーフPRプランナー/井口理(電通PR)

PRプランナー/根本陽平(電通PR)

ストラテジックプランナー/奥村誠浩(電通)

CMプランナー・コピーライター/佐藤雄介(電通)

CMプランナー/長久允(電通)

アートディレクター/川腰和徳(電通)

チーフプロデューサー・製作/丹生和朋(電通クリエーティブX)

ラインプロデューサー/堀尾悠介(AEI)

プロダクションマネージャー/設楽幸紀(AEI)

演出/佐藤渉(TYOモンスター)

撮影/酒井潤(クランク)

照明/桜井孝介

美術/河島康(クラフト)

録音/川村知嗣(PPC)

オフライン編集/山岡大起(PPC)

オンライン編集/山下武郎(PPC)

MA/川村知嗣(PPC)

音楽/池田耕太(バックスラッシュ)

ナレーション/一木美名子(大沢事務所)

協力/横浜スーパーファクトリー、クランク、PPC、CRAFT、チャンネル5、大沢事務所、バックスラッシュ

【プロフィール】

◆佐藤 雄介(さとう ゆうすけ)/CMプランナー、コピーライター

2007年電通入社、第10営業局に配属後、2008年から第5CRP局に所属。2010年TCC新人賞、2013年カンヌ国際クリエイティブフェスティバルのヤングカンヌ・フィルム部門にて、日本人史上初の3位入賞など受賞多数。※最後に一言:サウナにはまってます。

◆長久 允(ながひさ まこと)/コピーライター、CMプランナー

2007年電通入社、第5営業局に配属後、2008年から第3CRP局に所属。ドコモダケ、AKB48などのコンテンツ系クリエイティブが得意。2013年カンヌ国際クリエイティブフェスティバルのヤングカンヌ・フィルム部門にて、日本人史上初の3位入賞など、受賞多数。※最後に一言:ディレクターもやります。ばちこい低予算。

◆根本 陽平(ねもと ようへい)/PRプランナー

(社)日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。2008年電通パブリックリレーションズ入社、入社以来ディレクション局に所属し、2014年4月からストラテジックビジネス室に所属。デジタル分野に精通し、情報流通構造の調査データをベースにした効率的な情報拡散施策の立案を得意とする。2012年以降戦略PRなどをテーマに成蹊大学、立教大学で講義。※最後に一言:そろそろ地元秋田に貢献できる仕事したい!する!

(原稿:モリ、ホソダ、サワム)

本プロジェクトに携わったチーフPRプランナー井口理(電通PR)のコラムはこちら

【電通報】動画コンテンツとPRの相性について考えてみた。

http://dentsu-ho.com/articles/1148

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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