Netflix上陸! 迎え撃つHulu・船越社長が語る、動画配信サービスの可能性

週刊?!イザワの目

2015/09/17週刊?!イザワの目

有料動画配信事業に大きな変化が起きた。黒船と呼ばれるNetflixが2015年9月に日本市場に本格参入し、業界を賑わせている。

全世界50カ国以上で会員数6200万人を誇る世界最大手の「Netflix」は、映画やドラマなどの大量のコンテンツに加え、多数のオリジナルコンテンツ、バリエーションのある料金体系などの特徴を持ち、特にオリジナルコンテンツには定評がある。中でも「ハウス・オブ・カード野望の階段」は動画配信ドラマで初のプライムタイム・エミー賞を獲得したという実績もある。これまで国内の有料動画配信サービス市場は、米国から参入した「Hulu」をはじめ、大手携帯電話会社が運営する「dTV」(NTTドコモ)、「UULA」(ソフトバンク)、「ビデオパス」(KDDI)、国内最大のコンテンツ量を誇る「U-NEXT」の5社が台頭していた。有料動画の巨人を迎え、日本市場はどう動くのか。Netflixと同じく、米国から2011年に上陸し、先行して日本でビジネスを拡大するHuluの社長・船越雅史氏に聞いた。

オールジャパンを目指して

Q. 日本テレビから出向してHuluの社長になった船越社長ですが、地上波と有料コンテンツとの違いをどうお考えですか。

船越氏 以下、敬称略)あまり違いはありませんが、大切なコンテンツを預かっているという認識はあります。TV局は365日24時間プレミアム(良質)なコンテンツを作り続け、それを視聴者に届ける、つまり制作から放送までを一手に担っているのがTV局のビジネスモデルです。したがって、いい番組を作れば儲かり、その儲けを使って、またいい番組を作る、という好循環で利益を生むことができていました。しかし通信が発達し、動画が誰でも配信できるようになった今ではTV局だけが番組を届ける担い手ではなくなりました。その中で、いち早くサービスを開始していたHuluから日本向けの事業を引き継がないかという話を頂きました。このサービスの将来性を感じていたので承継することになり、その時すでにNHKをはじめ、TBS、TXさんのコンテンツがありました。それならば他局さんにも声をかけ「オールジャパン」のプラットフォームにしたいという思いを強くしました。今年に入り、Huluは局の垣根を越えたコンテンツが揃うプラットフォームになっています。これからも、Huluは、コンテンツを提供していただくコンテンツホルダー(局や製作会社など)さんと真摯に向き合い、「プレミアムコンテンツ」を制作していく皆様の力に少しでもなり続けたいと思っています。

20150917_digitalboard_01.jpg

人に語りたくなる一本

Q.今年の3月に100万人の会員数突破を発表していますが、成功の秘訣は何だとお考えですか。

船越)成功というのはおこがましいですが、「サービス」と「コンテンツ」の2軸だと思います。いつでもどこでもストレスなく見られるという、マルチデバイスでシームレスな再生環境は最も大切だと考えています。それが「サービス」という意味です。その上で「コンテンツ」。Huluは、映画・ドラマ・オリジナルコンテンツなど含め、2万を超える数が揃っていますが、2万という数字には、あまり意味がないと思っています。数の多さを誇るのではなくて、「人に語りたくなる一本」が見つかるか、というのが大切なんです。「人に語りたくなる一本」というのは、人生を支えてくれるような、あるいは変えてくれるような一本ということと同義ですが、それを見つけていただくには100本しかコンテンツがなかったらダメですよね。それでは何本揃えたら、日本のあらゆる世代の人に「一本」を見つけてもらえるのか、という話になり、今は2万という品揃えになっています。「高級デパートのように、選択肢が豊富で良質なコンテンツ群」を目指したいですね。

Q.2万もの膨大なコンテンツの中から、「人に語りたくなる一本」を見つけるのはとても根気がいるし、大変な気がします。ある意味、出会うのは「運」のような気もします。

船越)そこでキーになってくるのが、「リコメンド機能」です。

Q.その人の好みや興味関心に合っていると思われるコンテンツをおススメしてくれる機能のことですね。

船越)機械的に、データから算出するリコメンド機能は素晴らしいと思い、検討もしているし、導入している部分もあります。ただ、TVの地上波5~6チャンネルを選択するという環境で育ってきた日本人に、200チャンネルの中で生きてきたアメリカ人向けと同じような、機械的なリコメンド機能が本当に適しているかというと、疑問が残ります。日本人は選ぶのも苦手だし、押し付けられるのも苦手です。その中で最高のリコメンド方法はどんな方法なのかを模索しています。

手書きPOPがお手本

Q.書店にあるような手書きのPOPみたいなものができるといいですね。

船越)まさにそれです。POPが立っているということは書店員のおススメということですが、POPは見るのも、見ないのも自由です。その点で押しつけがましくない。でもおススメ情報を求めている人には有益です。ああいうさりげないおススメ感をインターネット上でどう出していけるかがポイントだと思います。

Q.書店のPOPは人がおススメしている、という手作り感もいいですよね。

船越)その通りです。だから、Huluでは機械的なリコメンドではなく、「人によるリコメンド」を導入しています。具体的にいうと、「特集」の部分は、編集担当が実際にその時期に世の中から求められているコンテンツがなにかを吟味し、コンテンツをピックアップして作っています。例えば、今年は花粉症の時期に花粉症特集と銘打ちマスクをつけた登場人物が出てくる映画(12モンキーズ)をおススメしてみました。これは少し遊びすぎて、お叱りもうけましたが。

Q.あれを人がやっているとは驚きでした。

船越)「友人がおススメ」するような世界観のリコメンドをどう作るかが課題です。テレビの番組では第一声は、番組をご覧の「みなさん」と言いますが、ラジオでは「あなた」と言います。通信は、ラジオに近い、一対一の世界だと思うんです。それには人間味のある表現やコメントが大切ですよね。それと、目的のコンテンツを見終わった後に、「もう見たいものが無いのでやめる」となってしまうのが一番残念です。その人が次に見たいと思うコンテンツをいかにスムーズにさりげなく見つけてもらうか、その道筋をどうつけるかも重要ですね。

原野はまだまだ広い

Q.いよいよサービスを日本で開始した「Netflix」ですが、今の印象をお聞かせください。

船越)さすがNetflixだと思う部分もありますし、Huluも負けていないなと思う部分もあります。ただ、業界そのものが、まだまだこれから伸びていく市場だと思うので、現状ではNetflixの力も借りつつ、共にこの業界を大きくしていきたいと思っています。この業界は前年比130%、500億の市場といわれていますが、DVD市場の5000億に比べるとまだまだ小さいし、認知度も低い。だからこそ、業界全体で切磋琢磨してそれぞれの会社のやり方で盛り上げてこのサービスの認知拡大をしていきたいと思います。

表現が正しいかは分かりませんが、国内1億2千万人という原野が広がっていて、現段階では各社がそれぞれの農地を耕す段階です。だって、まだまだ原野が余ってますからね。やってないことがありすぎるので、私たちは私たちのやりたいことをやっていくし、それぞれのやり方で耕せばいいと思うのです。そして農地が飽和状態になった時に、さあどうするか、という新しい課題が見えてくるのだと思います。それが来るのは5年後くらいと見込んでいます。いろんな意味で2020年はターニングポイントになるでしょうね。

Q.9月下旬にはAmazonも動画配信サービスに参入するといわれていますが、それについてはどうお考えですか。

船越)Amazonの動きについてはとても注視しています。これはNetflixとは別次元の話ですね。Amazonは動画配信サービスが事業のメインではなく、あくまで既存の有料会員向けにコンテンツを配信するというサービスだと聞いているので、これによりコンテンツの価値が下がってしまうのではないかということを危惧しています。動画がほぼタダで見られるというサービスに、果たしてどの程度のコンテンツホルダーがコンテンツを提供していくのかは注視していきたいです。

20150917_digitalboard_02.jpg

-----------------------------

■プロフィール

船越雅史(ふなこし まさし)

HJ ホールディングス合同会社 職務執行者 社長

奈良県出身。86年日本テレビ放送網入社・編成局配属。編成局ライツ審査部にて、著作権契約業務、配信、DVD等の海賊版対策業務などを担当。コンテンツ事業局ライツ事業部長としてコンテンツビジネス全般、アニメ制作業務、出版事業に携わる。2014年4月にはHJホールディングス合同会社に(日本テレビインターネット局現職出向)。2015年4月1日より現職。「日テレオンデマンド」設立メンバー。

(聞き手:イマニシ/撮影:アライ)

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

TOP