広島県、観光PR成功の秘訣

週刊?!イザワの目

2016/07/28週刊?!イザワの目

ここ数年、観光客数の過去最高を更新し続けている広島県。

2012年の「おしい!広島県」プロモーションに始まり、2014年から無料で発行している観光情報誌「広島究極のガイドブック」は、その最新号(2016年6月発行、表紙は俳優の斎藤工さん)が 即品切れしてニュースになるなど、話題に事欠かない。観光客誘致や移住促進などを目的に、PRやプロモーションに力を入れる自治体が増えつつある中で、広島県は、話題づくりという点で一歩リードしている印象だ。成功の秘訣はどこにあるのだろう。

20160728_digitalboard_01.jpg

地元の"あたりまえ"が宝になる

広島県の観光プロモーションが一躍脚光を浴びたのは、2012年、「おしい!広島県」を合言葉に仕掛けられたキャンペーンだ。広島県ゆかりの著名人として有吉弘行さんを起用し、レモンの生産日本一なのに知らない人が多い、お好み焼きの店舗数は日本一なのに「広島風」と付いてしまうなど、広島のあまり知られていない観光資源が実に「おしい」と自虐的にPRし、動画を中心に話題となった。原爆ドームや嚴島神社、もみじ饅頭などは誰もが思い浮かべる広島のイメージだが、あまり知られていないその他の豊富な観光資源を「おしい」から「おいしい」に変えていこうという目的があった。

2年続いた同キャンペーンはその後、「広島県究極のガイドブック」という"本"を使ったキャンペーンに替わる。2014年の第一弾は「泣ける!広島県」。Perfumeをはじめ広島出身の著名人や地元の人々の情報をもとに、美しい景色、おいしい食べ物、人情あふれる人々に感動して"泣ける"旅を紹介している。2015年の第二弾「カンパイ!広島県 ~見んさい!食べんさい!飲みんさい!~」では、奥田民生さんが見る広島の街の"普段の顔"や、おもわずカンパイしたくなるようなグルメや景色を紹介。そして今年6月に発行した、第三弾「カンパイ!広島県 広島秘境ツアーズ」は、まだ知られていない広島の魅力をあえて「旅の秘境」と言い、仮想の旅行エージェンシー「広島秘境ツアーズ」を設立。"嚴島神社を望む特設水上コテージでのハネムーン"や"帝釈峡の紅葉を飛行撮影家と一緒にモーターパラグライダーで楽しむ"など、広島県でしかできない体験ツアーや、地元の人がオススメする、王道とはちょっと異なる穴場旅を提案している。

20160728_digitalboard_02.png

▲「広島秘境ツアーズのプレミアムツアー(左)と、地元の人がオススメするセルフ旅(右)。その他、「JTB中国四国」「H.I.S.」「阪急交通社」「ひろでん中国新聞旅行」の4つの旅行会社とのコラボで生まれた秘境ツアープランも用意されている。

これらのキャンペーンに共通するのは、地元で埋もれている魅力を再発見して発信している点だ。「地元の人にとってはあたりまえでも、県外の方にとっては非常に魅力的に感じるものが実はたくさんあります。そのようなお宝を発掘し、磨いていかなければいけません」と広島県商工労働局観光課の大内貞夫課長は語る。

20160728_digitalboard_04.jpg

▲広島県商工労働局観光課 大内貞夫課長

県が売り込みたいものだけにこだわらない

第三弾の「カンパイ!広島県 広島秘境ツアーズ」は、旅好きとして有名な斎藤工さんが表紙を飾った。今回が初めての県外の著名人の起用だ。これまでの第一弾・第二弾の人気と相まってか、配布に先立って行われたインターネット予約では、3,000部が10分で終了。6月24日に全国で無料配布が開始された数日後には、各地で品切れとなり話題になった。これらの成功について「他の自治体にはできない広島唯一の取り組みになっているか、という視点で県のブランド構築の方針を最初にきっちり決めたこと、そしてターゲットを明確に定めたことに尽きると思います」と大内課長は分析する。「県の観光資産がどのような層に一番刺さるのかを細かく調査し、『大都市圏に住む30~40代女性』にターゲットを絞っています。このターゲットは、上の世代にも、下の世代にも波及効果の高い層なんです。2012年の『おしい!広島県』以前は、こういった調査はできていませんでした」(大内課長)。今回のガイドブックも、広島関連施設の他にターゲット層が集まるであろう美容室やカフェ等に置いているという。

また「県外の目」の活用も忘れてはいけない。ガイドブックの編集には、2012年の「おしい!広島県」当初から広島県観光PR総合ディレクターとして参画している江口カン氏(KOO-KI)ら県外のクリエーターが参加し、編集メンバーの中にはターゲット層に当たる女性も含まれている。「ガイドブックで取り上げている場所や切り口が、県が売り込んでいきたいものとは多少違うことはありますが、大切なのは、広島のファンが増えるような魅力的なガイドブックに仕上がっていることです」(大内課長)。実際にガイドブックを手にすると、そのクオリティの高さに驚かされる。120ページにわたるガイドブックは美しい景色・グルメの写真やイラストが目に留まる。「動画ではできない、"じっくりと良さを知ってもらう"ための本」という狙い通り、読み物としても楽しめる雑誌のようなガイドブックであることが、ファンをつくっているのだろう。

20160728_digitalboard_03.png

県民や市区町村を巻き込む

県民の参加や市区町村との連携を促す仕組みも構築されている。県は市区町村と比べると県民と距離があり、市区町村の方が身近な存在だ。「せっかく広島までいらっしゃった方に、"なんだ、こんなもんか"と思っていただきたくはないので、オール広島で観光振興に取り組んでいます」と大内課長は言う。各市区町村と情報交換を行い、各地の魅力づくり・対外発信は県と市区町村の二人三脚で行っているという。「おしい!広島県」の時に行った「全力歓迎課」(広島県職員が芸名を持ち全力でおもてなしをするプロモーション)は、県職員自ら前線に立ち、プロモーションを盛り上げた。この施策は、県内の市区町村にも影響を及ぼし、安芸太田町では女性だけの全力歓迎課「安芸太田町AKO」が発足した。県のプロモーションが市区町村へ波及効果をもたらした形だ。

県民の参加も欠かせない。「泣ける!広島県」や「カンパイ!広島県」のロゴマークを自由に使ってもらうようにしている。実際にロゴマークを使ったポスターを県内のお店が独自に作成するなど、県民に浸透してきた手ごたえがあるという。また「広島秘境ツアーズ」では、ツアーづくりを一般の県民にも協力を仰いだ。「サイクリストのためのB級アウトドア探訪」を提案した広島市内にあるサイクルショップ「Grumpy」の池田竜一氏は、「広島は世界遺産もありますが、例えば『かかしの里山』のような魅力的なB級の面白さを持ったスポットもたくさんあるので、その面白さを伝えたい思いで協力しました。私は県外出身者ですが、都会と田舎の両方を併せ持つ広島に魅力を感じます。自転車さえあれば、都会の遊びもできるし、自然の遊びもできます。そこが魅力だと思います」と語る。生粋の出身者であってもなくても、「広島好き」な人たちの力を借りて、さらに「広島好き」な人を増やす。広島県の懐の深い戦略が、功を奏している典型的な例だろう。こういった自発的に参加したくなる仕組みをつくるところにも、成功のカギがあることがわかった。

20160728_digitalboard_05.png

▲ 「サイクリストのためのB級アウトドア探訪」を提案したサイクルショップ「Grumpy」の池田竜一氏(左)。集落の人口よりも、かかしの数が多いという広島市佐伯区湯来町上多田集落の「かかしの里山」(右)など、広島のディープなスポットを紹介している。

今後について大内課長は「秘密です!(笑) 真面目な話をしますと、"本"という手法を継続するのが良いのかどうかは、真剣に考えていきたいと思っています。今、非常に好評をいただいていますが、別の手法が必要な"次の段階"に来ているのかもしれません」と話す。成功し続けるには慎重に世の中を見極める必要があるのかもしれない。今後の広島県のプロモーションの動向に注目していきたい。

Report by Ruriko Imanishi, Ayako Hasegawa, Hayato Mangoku

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

TOP