• HOME
  • 週刊?!イザワの目
  • B.LEAGUE鮮烈デビュー! 「バスケ素人」が仕掛けた、攻めの広報 ~バスケを第3の人気プロスポーツに!~

B.LEAGUE鮮烈デビュー! 「バスケ素人」が仕掛けた、攻めの広報 ~バスケを第3の人気プロスポーツに!~

週刊?!イザワの目

2016/11/10週刊?!イザワの目

今年9月22、23の両日、日本初のプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(以下、Bリーグ)」が、ついに幕を開けた。開幕戦のチケットは、プラチナボックス20万円、最安シートでも5500円という価格設定だったが、発売から20分で完売。期待の高さの表れと、開幕前から注目が集まった。

開幕戦の中継が始まるとSNSでもBリーグに関する話題が溢れ、盛り上がっているキーワードをランキング形式で紹介するYahoo! JAPANの「リアルタイム検索」では、上位20ワードのうち19をBリーグ関連が占めた。翌日の報道では、白熱した試合内容はもちろん、公式戦として世界で初めて導入した全面LEDコートや人気アーティストによるパフォーマンスなど、"魅せる演出"が話題となった。

こうして華々しくデビューしたBリーグ。その仕掛け人は、ひとりの"バスケ素人"だという。「イザワの目」編集部の元バスケットマン記者が取材した。

20161110_BLEAGUE_offcial_02.jpg

"攻めの広報"でBREAKを!

Bリーグは2つの男子バスケットボールリーグを統合し、2015年4月に発足した。同年8月、この組織に仲間入りしたのが経沢希志子さんだ。創業まもない楽天で13年間働き、ファストフード業界で新部署立ち上げに関わった後、Bリーグの広報部長に抜擢された。それまでバスケットボールとは無縁だったという経沢さん。なぜBリーグに? と問うと、「私が広報部長になったのは、いわゆる"普通の人"ではつまらなかったからでしょう」と、笑って話してくれた。

"BREAK THE BORDER(前例を笑え、常識を壊せ、限界を超えろ)"というスローガンを掲げる、Bリーグ。チェアマン・大河正明氏が、経沢さんに託したミッションは、"攻めの広報"。「取材を受ける窓口としての広報ではなく、積極的にやってほしい」。そう言われた経沢さんがまず着手したのは、当の大河チェアマンのイメージ改革だった。

銀行出身の大河チェアマンは、真面目で手堅い印象の、いわゆる"銀行マン"タイプ。スポーツ業界初の革新的な取り組みに次々と着手しているBリーグとしては、まずスポークスマンの見た目を変えることで、そのイメージが増幅されるのではと考えた。「この人なら本当に変えてくれそう」と思わせるべく、経沢さんのコーディネートの下、髪形、メガネ、服、靴などを刷新。以前の大河チェアマンを知るメディアからは、「何があったんですか?!」と取材されるほどの変貌ぶりを見せた。

"ぶっ飛んでる"施策でバスケ素人を魅了

「Bリーグっておもしろそう、なんかぶっ飛んでる、これから何をやるんだろう。そうやって、次世代的な印象を持ってもらえるような施策に、特に注力しました」と言う経沢さんが次に注目したのは、イケメン選手たち。バスケットボールの選手はイケメン揃いな上、背が高く、体格もいい。ユニフォームがノースリーブなので、鍛え上げられた腕がファンをくぎ付けにする。きっと、自分と同じようなバスケ素人や、競技にそこまで興味がなかった女性たちも虜にできるとひらめいた経沢さんは、男性ファッション誌『MEN'S NON-NO』(集英社)とコラボレーションし、『B.LEAGUE BIBLE』ムックの出版や特設サイトをオープン。ムックでは、「三代目 J Soul Brothers」のメンバーとBリーグの選手が肩を並べて表紙を飾り、一躍話題に。AR(拡張現実)機能を活用し、スマートフォンをかざすと、彼らが動き出す仕掛けも施した。Amazonの予約販売は3日で完売。発売前に重版が決定するほどの人気を博し、すでに3回増刷された。

開幕戦直前に実施されたイベントでも、この切り口を活用し、選手による生着替え&ファッションショーを実施した。通常は選手や監督が意気込みを語るにとどまることがほとんどなだけに、スポーツ業界を見渡しても異色の演出。翌日のスポーツ紙は「異例」「破天荒」という文字が踊った。

TIP OFF CONFERENCE.png

開幕戦直前イベント「TIP OFFカンファレンス」に出席したBリーグチェアマン大河氏と、所属チームの選手たち(上)。決意表明後には、選手の生着替えやファッションショーが行われた(下)。【提供:Bリーグ】

BLEAGUE BIBLE.jpg

『B.LEAGUE BIBLE』ムック。表紙は、三代目J Soul Brothersの岩田剛典さんと山下健二郎さん、田臥勇太選手、比江島慎選手、田中大貴選手、岸本隆一選手が共演した。【提供:Bリーグ】

コアファンは、王道ネタで掴む

もちろん、ライトファン向けの"飛び道具的"な施策ばかりに注力したわけではない。SNSの公式アカウントを「ファンとの絆づくり」と位置付け、コアファンが喜ぶようなネタを細かに投稿した。例えば、能代工業高校で最強といわれた田臥勇太選手と仙台高校時代にマッチアップした志村雄彦選手が、19年の歳月を経て再びBリーグで激突することになった試合を「高校以来19年ぶりのマッチアップ!」として紹介するなど、往年のバスケットボールファンなら思わず見たくなる仕掛けを積極的に取り入れたのだ。

素人目線を生かした、ライトファンを取り込むような奇抜な企画から、コアファンの心を掴む王道の施策までを積極的に取り入れた"攻めの広報"が功を奏し、前述の通り、開幕戦は大成功。中継終了後わずか3時間のうちに、その後のBリーグのチケットが、開幕戦前の累計販売数の2倍売れた。

地道にコツコツ攻める

人気に火がついたバスケットボール。とはいえ、人気を継続させる難しさや、競技を浸透させるための障壁は厚いだろう。記者は元バスケットマンゆえに、それらを身に染みて感じている。経沢さんは、いったい、どのようにその壁を壊そうとしているのだろうか。

「選手の認知度アップが第一です。もちろん、メインコンテンツは試合そのものですが、プロスポーツには、あの選手が好きだから試合を見に行くという観点も重要。そう思われる選手が増えることが大切だと思います。そのためには、もっと選手が"知られ"なければいけません。それが、ひいては、バスケットボールが野球、サッカーに次ぐ、第3の人気プロスポーツになるカギになるはず。私はそう信じています」と経沢さん。

世の中に"知られる"第一歩として、SNSでの発信力強化(メディア化)と、メディアを通じた"地道な"情報発信に注力するという。これまでの"異色な"取り組みからすると、意外と普通の印象だ。どんな工夫があるのだろう。

メディアに取り上げてもらうには、まず、目の前の記者や編集者に面白いと興味を持ってもらえないと始まらない。

経沢さんは、メディアと会う際、できるだけ、選手も一緒に連れて行くことを心がけているという。プロ野球やJリーグのプロモーションでは、あまり聞かない手法だ。先日、総合スポーツ誌『Number』(文藝春秋)の編集長との面会に、日本代表である辻直人選手を連れて行くと、「面白い!」との好印象からトントンと企画が決まり、『Number』本誌での掲載、そしてWebでの連載も決定したという。

また、Bリーグの1部・2部リーグの全会場にカメラマンを派遣し、オフィシャル写真として専用サイトにアップし、メディアへの無償提供も行っている。メディアが会場まで足を運べない場合でも、取材をサポートできる体制を整えているのだ。今後は、記者や編集者に向けて、各クラブから吸い上げた情報を取材の「タネ」として、メルマガのように定期配信することも計画しているという。地道ながらもコツコツとした広報活動を積み上げていくことで少しでも報道機会を増やし、"知られる"きっかけにしようと工夫を凝らしている。

20161110_BLEAGUE_offcial_01.jpg20161110_BLEAGUE_offcial_03.png

メディアが自由に使える充実のオフィシャル写真。【提供:Bリーグ】

素人目線が カギ

「バスケットボ-ルはまだまだマイナースポーツ。ここまで話題になったのも周りの皆さんのおかげです。メディアやパートナー(協賛企業)など、Bリーグや業界全体を盛り上げようと、ご尽力くださったことが、最も大きな要因。まさにバスケ愛です」と経沢さん。一方、本人もBリーグの鮮烈デビューの立役者であり、日本バスケットボ-ル界の盛り上げに間違いなく寄与している一人にもかかわらず、今でも遠慮がちだ。「活動を支えているのは、何らかの形でバスケに関わってこられた方が多く、バスケ素人の自分がみんなの仲間に入れてもらっていいのだろうか」と、今でも少し迷いがあるという。しかし、"バスケ素人"だからこそ、元来のバスケットボールファンや経験者だけでは思いつかない視点や工夫にたどり着くのではないだろうか。素人視点は、バスケ愛に匹敵する重要な要因。それこそが、バスケットボール大国ニッポンを実現するカギになる。元バスケットマンとして、そう実感する取材だった。

Report by Hayato Mangoku

-------------------------------

20161110_digitalboard_02.jpg経沢希志子さん プロフィール

B.LEAGUE 広報部部長

高級婦人服FOXEYで社長秘書、会長秘書、人事総務を務め、1999年に創業まもない楽天株式会社に入社。

広報や楽天市場プロデューサー、マーケティング等を担当。楽天市場のトップページリニューアルやランキング市場などの新規メディアの立ち上げや楽天MAGAZINE編集長を務めた。「取材を受けるだけでなく、自分たちが出たい媒体にアプローチしたい」と提案したところ、新たに作られた攻める広報の部署に異動。KFCにおける、デジタルマーケティングの部署立ち上げに参画した後、2015年8月に公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)に転じ、現職。

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

TOP