AbemaTVのメディア革命とは~目指すはスマホ世代のマスメディア~

週刊?!イザワの目

2016/06/02週刊?!イザワの目

今、映像コンテンツは戦国時代。若者のテレビ離れが叫ばれる中、Netflixなどの動画配信サービスや、民放5局のキャッチアップサービス「TVer」が注目を集めている。一方で、テレビを起点としない映像コンテンツもSNSを中心に浸透し、いまやスマホやタブレットで"好きな時に、好きなコンテンツ"を見ることが視聴スタイルとして定着してきている。そんな中、リアルタイムの"放送"にこだわったのが、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同運営しているインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。4月11日に本開局してから約2カ月、ユーザーの反応や今後の展望について、サイバーエージェント取締役兼AbemaTV取締役副社長 卜部宏樹氏とAbemaTIMES 編集責任者 古川政博氏に伺った。

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AbemaTVとは

24時間365日、オリジナル番組をはじめ、音楽やスポーツ、アニメなどのコンテンツが楽しめる20チャンネル以上を無料で提供する「インターネットテレビ局」。サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で展開する動画サービスで、4月11日に本開局し、ニュースやバラエティなど20超のオリジナル番組も放送している。スマートフォンやPC、タブレットで、テレビを見るような感覚で利用することができる。

目指すは"マスメディア"

−本開局から2カ月、手ごたえはいかがでしょうか?

AbemaTV副社長 卜部宏樹氏(以下、卜部):おかげさまで5月21日に300万ダウンロードを突破しました。AbemaTVは、あくまで主軸はスマートフォンでのリアルタイム視聴のサービスです。早送りや巻き戻しはもちろん、頭出しもできません。その点で、YouTubeやニコニコ動画のような動画共有サービスはもちろん、NetflixやHuluのようなオンデマンドの動画配信サービスとも異なる、海外にも例のない新しいモデルといえます。「果たしてユーザーに受け入れてもらえるのか」という点は開局前から非常に心配していたところでしたが、2カ月でこの数字であれば第一段階はクリアしたのかなと思っています。

-ユーザーはどのような層が多いのでしょうか?

卜部:現在のコアユーザーは30代男性です。おそらく新しいサービスへの抵抗感が少ない層であることと、今のコンテンツがテレビ視聴層と親和性があるからではないでしょうか。視聴時間帯はゴールデンタイムと22時~23時の深夜帯、それと土日が多いです。スマホでどこでも見られるといいつつ、Wi-Fi環境のある家でじっくり視聴する人が今は多いのかもしれません。そういった点でもテレビに近い視聴形態と言えると思います。ただ、AbemaTVが目指しているのはあくまで新しい"マスメディア"。テレビを見ていない10-20代にもっと見てほしいとも考えているので、コンテンツも3カ月ごとに見直す予定です。

また、7月から本格的に導入開始予定の広告に関しても、ネット広告では当たり前の細かいターゲティングは行いません。テレビの広告枠は"マス"にリーチできるからこそ意味があります。AbemaTVも"マス"へのリーチを狙います。ただ気を付けないといけないのは、CMを含めた全体のトーンとして、若い人に「これは自分のメディアじゃないな」と思われないようにすることですね。

AbemaTIMESをハブに

-マスメディア化を進めるためにどのような取り組みをしているのでしょうか?

AbemaTIMES編集責任者古川政博氏(以下、古川):サイバーエージェントで培ってきたWEBのノウハウをフル活用して成長できればいいと思っています。その中で、ハブになるのがAbemaTIMESというWEBのニュース媒体です。AbemaTVで放送した内容を記事配信しているので、放送を見ながら並行して記事を書く体制を敷いています。まだ中心メンバーは4人なので全番組とはいきませんが(笑)、外部スタッフの力を借りながら、SNSでシェアされやすいように記事だけではなく動画も切り出して、AbemaTVへの送客を促す仕掛けをしています。例えばFacebookでは字幕を付けて尺を短く、YouTubeでは長尺で切り出したものをアップするなど、チャネルごとに最適な形に工夫しています。

-番組を見ると地上波に出ているようなタレントさんも出演されていますが、やはりネット文脈も意識されていますか?

古川:そうですね。キャスティングには地上波よりもネットでの話題性を意識していると思います。例えば先日のオバマ大統領の広島訪問の際には、生中継に加えて、当日20時からの『AbemaPrime』に、オバマ大統領のものまねで知られるお笑い芸人のノッチ(デンジャラス)さんが出演しました。ノッチさんの画像と共に放送前に告知をしたり、AbemaTIMESで直後に記事を配信しています。元々テレビとWEBニュースは親和性があるので、AbemaTVの画像や動画を使って配信できるのは強みですね。こういった連携はどんどん試していきたいです。

卜部:番組制作チームとAbemaTIMESの編集チームは一体となって活動していて、チャットで常に放送予定の番組の企画や内容を共有しています。なので、放送前に番組の内容を記事化できるんですよね。逆に、番組制作にもネットの反応は生かされています。記事の反響や、「SmartNewsに掲載された! Yahoo!映像トピックスに取り上げられた!」といったこともリアルタイムに共有しているので、番組制作側も「どんなコンテンツがWEBでウケるのか」を考える機会が自然とできるのだと思います。

―自社の他メディアで培ってきたWEBでの情報流通のノウハウが生かされているのでしょうか?

古川:サイバーエージェントではAmeba News やSpotlight、by.Sなどを運営しているので、見出しの付け方などのノウハウは生かしていますし、ネタにあわせてSpotlightに記事配信をしたりしています。

卜部:AbemaTVはCtoCサービスではないので、私たちがコンテンツを作って提供していかなければなりません。サイバーエージェントには、AWA(音楽配信アプリ)のようなコンテンツとなるサービスもあるし、アメブロやソーシャル拡散できるメディアもあります。それらのサービスやノウハウを活用していくことも考えています。

古川: AbemaTIMES自体も、番組への送客だけでは不十分だとも思っています。ただのオウンドメディアになったらつまらないですよね。今後は、AbemaTVのコンテンツに限らず、世の中で話題の動画や面白い事象などをどんどん紹介して、独立したひとつのメディアとしての立ち位置を確立していきたいと思っています。

「独り言」がつくりあげるライブ感

-スマホでの"リアルタイム視聴"の手ごたえは?

卜部:昨今のテレビ離れは「決まった時間に視聴しないといけない」ことによるものと言われています。しかし、AbemaTVで地上波やYouTube等でも視聴できるコンテンツを流してみたところ、どんどん視聴数が伸びた番組がありました。みんなで一緒にコメントしながら盛り上がる、ライブ感を求めるユーザーが想像以上に多いと感じました。

古川:オリジナル番組ではコメント投稿された視聴者の意見をリアルタイムに番組内容に反映することもあります。ユーザーが「自分も参加している」という感覚を味わえるのが地上波にはない強みではないでしょうか。

卜部:当初はTwitterのシェア機能だけだったのですが、コメントを投稿したいという声があったので現在のコメント機能に作り直しました。これからさらに使いやすく改善も予定しています。テレビの前で思わず言ってしまう「独り言」をみんなと共有したい、というユーザーが多いのだと思います。TwitterなどのSNSとはまた違う、AbemaTV内のコミュニティも形成されつつあり、興味深いです。

−今後、AbemaTVはどのような存在になっていくのでしょうか。

卜部:TwitterやFacebookは「これが見たい」という明確な目的があって起動するのではなく、何げなくアプリを開きますよね。AbemaTVも同様に、開けば何かがある、楽しめるという安心感がある、そういうメディアにしていきたいと思っています。だからこそ、無料である必要があるのです。テレビでは「この番組を見ないと話題に乗り遅れる」ということがありました。将来的にはAbemaTVをそういう存在にしていけたらいいですね。

【プロフィール】

卜部宏樹 -Hiroki Urabe-

2010年、サイバーエージェントへ入社し、翌年2月、アプリボット代表取締役社長に就任。2014年4月にサイバーエージェント本体に戻り、執行役員を経て、同年12月、サイバーエージェント取締役に就任。2015年4月から、テレビ朝日との共同出資による動画配信事業「株式会社AbemaTV」担当となり、取締役副社長に就任。

古川政博 -Masahiro Furukawa-

2004年サイバーエージェントへ入社。2006年8月に「アメーバニュース」を立ち上げ、その後2008年から「Ameba芸能人・有名人ブログポータル」など芸能人ブログを中心としたブログメディアの運営に携わり、 2011年に「Ameba編集室」、2016年4月から「Abema編集局」「AbemaTIMES」の責任者として従事。

Report by Kento Inaba, Hiroshi Sawamura

この記事を書いた人

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Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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