「広報会議」×「ブレーン」 2015年の広告・PR業界総まとめ&2016年をヨム!

週刊?!イザワの目

2015/12/24週刊?!イザワの目

2015年も残すところあと7日。今年は広告・PR業界にとってどんな1年だったのでしょう。

今年最後の「イザワの目」は、業界関係者必読の豪華対談!

広告、PR、プロモーションをあらゆる角度から幅広く見つめてきた、「広報会議」森下郁恵編集長と「ブレーン」刀田聡子副編集長に、2015年を振り返りつつ、来る2016年の注目トピックスについて熱く語っていただきました。

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Part1.2015年のCM界のトレンドは?

―今月9日、CM総合研究所が2015年度のCM好感度ランキングを発表しましたが、「KDDI/au」の「三太郎」シリーズが初の年間首位を獲得しました。

ブレーン・刀田副編集長(以下刀田):KDDI/auの「三太郎」シリーズは今年を代表するCMになりました。今は情報があふれている上に、消費スピードもとても速いので、その情報を受け取った生活者が、すぐ理解できるコミュニケーションの速さや伝わりやすさが求められます。その意味で、このCMは誰もが知っている、説明不要な昔話をモチーフにしたところが奏功したと思います。

―auの三太郎CMは、面白いストーリーを展開しつつも、打ち出したい商品やサービスについても、うまく織り込んでいるのが上手ですよね。

広報会議・森下編集長(以下、森下):三太郎のCMはPRの観点からも非常に面白いと思いました。キャスティングの力に頼らず、CMそのものに、ちゃんと毎回ニュースが盛り込まれているので、こちらとしても、取り上げたいなと思ってしまいます。

また、年初の新商品・新サービス発表会では、田中孝司社長自ら、CMのキャッチコピーである「パッカーン!」というフレーズをプレゼン内で何度も使っていました。広告と、企業メッセージ発信の場として広報的に重要な発表会とが、うまく連動しているなと思いました。「企業トップの意思」と「商品・サービス」と「CMクリエイティブ」すべてが連動しているから、受け手側も、企業が何を伝えたいのかをはっきり捉えることができますよね。

刀田:そうですね。それらが相乗効果となって、KDDI/auのイメージがすっきりと伝わっていったのだと思います。まさに"一気通貫のメッセージをみんなで持つ"というのが大事ですよね。

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KDDI/auのCM「三太郎」シリーズより

―他にはどんなCMが注目でしたか?

刀田:世の中で話題にもなって、クリエイティブとしても評価された、という点でいうと、もう一つはRIZAPです(ACC CM FESTIVALでフィルム部門「ACC ゴールド」を獲得)。RIZAPのCMは、「結果にコミットする」というコピーを世の中の人が次々にアレンジして使い始めたのがすごいと思いました。あのキーワード=「RIZAP」という連想が、生活者の中にできていますよね。パロディ化されて、たくさんの人に使われるのっていいコピーだなと思います。

森下:業界内だけでなく、一般の人の普通の会話の中にも出てくるようになると、本当に「はやっている」のだなと思いますね。

―コンテンツが自走していった、今年を象徴するいい事例ですね。

Part2.「動画」はバズだけじゃない!使い道に変革が?!

―CMが今年元気だった一方で、WEB動画も盛り上がったなという印象ですが

刀田:大手の企業が動画に参入し始めている気がします。

これまでは、テレビCMは大手、WEB動画はCMが打てない規模の企業でも面白さで勝負できる場、というイメージでした。でも、今年は、マス中心でコミュニケーションをしてきた企業が、WEB動画もトライしてみようと、導入した例が増えたと思います。資生堂「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」などもそういった位置づけの動画です。WEB動画界では後発組ですが、だからこそ非常に内容も練ったものを作っています。クリエイターやキャストにもこだわっています。実際、この動画はEPICA AWARDS 2015においても「フィルム・グランプリ」を受賞しています。

―地方自治体も、ゆるキャラからWEB動画で話題をつくる、という視点にシフトした気がします。例えば、宮崎県小林市の動画は話題になりましたよね。小林市に限らず、「方言が外国語みたいに聞こえる」というのは、なんとなく頭にあったような気がしますが、それを動画で表現するというファーストアイデアが見事ですよね。

刀田:〝その手があったか!"ですね。

―自治体によるWEB動画はこれからも増えていくのでしょうか?

森下:自治体による動画が増えれば増えるほど、「動画が話題になった」の先も冷静に考えなくてはいけないですよね。最近、自治体の広報担当者による座談会を取材した時にそう感じました。移住プロモーションに力を入れてパブリシティもたくさん獲得し、一見盛り上がっていそうに見える自治体の担当者の方がおっしゃっていたのですが......ある時、「市民がついてきていない」ことに、はたと気づいたそうです。「市がどんなにメディアに華々しく取り上げられても、市民は特にメリットを感じていない」。それをどうにかしないといけないと思ったそうです。それを聞いて、パブリシティで賑やかす、WEB動画でバズをつくる、というやり方は決して間違っていないと思いますが、市民が自ら動きたくなる構造をどうデザインするのかが大切なんだなと。やはり当事者が動いていかないと意味がないのだと思います。

―結局、手法だけ取り入れようとすると、賑やかしで終わってしまいますよね。「移住した時はどうなるのか、仕組みは?」といったファクトが揃っていないと意味がないですよね。

森下:まさにコーポレートストーリーに基づくようなものを制作する時こそ、広報の出番だと思います。広報にはクリエイターが刺激を受けるようなファクトを集めてほしいですね。広報はファクトが勝負ですから、それを突き詰めていくと「面白い」だけではない、それ以上のものが出せると思います。この融合が見てみたいですね。

刀田:とはいえ、気楽に面白いだけっていうのも魅力はありますけどね(笑)。バズって言いますけど、狙ってバズらせるのも大変なことですし...。

森下:つまり、両方理解しているのが大事ですよね。インターナルの視点でいうと、住民や社員の人が納得できるような表現にすることも大事ですね。たまに、対外的には評判がいいのに社内では...、みたいなことがありますが、それでは良くないですよね。きちんと社内もコンサルテーションすることが大事になってきますよね。

―社内の理解やモチベーションアップという目的で動画を活用することも有益ですよね。

森下:そうですね。最近、周年をきっかけに、動画を作る企業が増えてきています。たとえば、社員が自社の原点を思い出すようなブランド体験のワークショップの様子を撮影して、編集して、全社員が集まる周年の節目のイベントで流してみたり。さらに、その動画は周年サイトで公開するなど、社外にも発信できる。この場合、再生回数どうこうよりも、社員が「体験」したということが大事だと思います。このように、バズとは別の使い道で動画が使われるようになってきていますね。特に周年というのはいいきっかけですね。

同じく、B to Bのグローバル企業も、社内外にメッセージを届けるために動画を作りたいという声が増えている気がします。一目で技術を伝えることもできるし、世界中に支社がある企業などは、ノンバーバルで伝えられるツールとして、やはり動画が有益な方法なのだと思います。このように、広告的な使い方だけでなく、インターナルな使い方など、さまざまな用途で動画が使われるようになってきましたね。

話題を作るための動画だけではなく、"伝える"コミュニケーションツールという意味で動画がインフラ化していくのでしょうか。

刀田:ブレーンでBOVAという動画コンテストを開催していますが、審査員の木村健太郎さん(博報堂ケトル)が、「今後、すべてのコンテンツは動画になっていく」とおっしゃっていました。企業の動画活用という意味では、対外的に発信するだけではなくインターナル向けのものや商談用ということでも活用していく機会は増えると思います。それこそ動画マーケティングですよね。

Part3."越境"でアイデアがジャンプする!

―CMやWEB動画のほかに、今年関心を持ったトピックスはありますか?

森下:最近、「面白そう」だと思ったのが、プロジェクト体制を結合している企業ですね。最近取材させていただいた中では、富士重工業が2015年度から始動した『スバルネクストストーリー推進室』はとてもいい例だと思いました。他にも全社連動のプロジェクトに広報の視点が入ってくる事例が増えた1年だったと思います。トップも社員もコンテンツやストーリーを共有して全社的に握ってから、宣伝や広報を行うべきだということを、それぞれが理解して活動されている企業が増えてきているのかもしれません。

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Subaru Next Storyプロジェクトを発表する富士重工業

「広報部」「広告・宣伝部」が別々の動きをしている企業はまだ多いですが、富士重工業のような"越境"の体制にすると、お互いの領域の視点を生かしながら推進できるし、相乗効果を生むことができますよね。

森下:それを実現するには、やはり組織の一貫性が大事ですね。そして発信元である企業が情熱を持っているところが強いと思います。感覚的に「何かこの会社のPRのやり方が変わったな」「ニュースリリースが面白くなった、気になる!」と思って取材にうかがうと、そこには組織の壁を超えていこうと奮闘しているPRパーソンがいらっしゃる確率が高かったです。ただ、広報の人は今までよりちょっと苦労が増えますよね(笑)。今までやってこなかったマーケティングの話もしなければならないし、売り上げなどの成果も求められるようになる。これまでと違い最初から参加することでの責任は発生しますからね。

―広報の部署の人は、これまで売り上げや目に見える成果をあまり求められてなかったですよね。前述のような全社プロジェクトを始めようとする時に、旗振り役になろうとする広報の人はまだ少ないのではないかとも思います。でもこれからはそれだけではだめなのでしょうね。宣伝部と広報部という分け方すらも、今後は変わっていくかもしれませんね。

刀田:コミュニケーションを担う存在という意味では、どちらもミッションは近いですからね。

―ほかに「越境」しているなと感じる人や企業はありますか?

刀田:今年活躍していたクリエイターを考えてみると、専門領域をクロスして(越境)いる人が面白い仕事をしていたなという気がしています(例:プロモーションからマスへ、デジタルから空間へ、など)。なぜかと考えてみると、経験領域が倍になるということももちろんありますが、そもそも場所に捉われずに面白い仕事をしたい人が越境するというか、越境せざるをえなくなるのかなと。

たとえば「デジタル→空間」の例でいうと、WEBCMの「【閲覧注意】雪道コワイ」で知られるBBDO J WESTのコンテンツプランナー・眞鍋海里さん。彼は今年、九州で密室お化け屋敷『訪問者』をプロデュースしました。眞鍋さん曰く、WEB上で能動的に人を動かす(クリックさせる)導線を考える仕組みと、お化け屋敷空間の中で人を動かす仕組みは似ているそうなんです。眞鍋さんのこれまでのデジタルプロモーションの経験がすごく生かされているというお話が新鮮でした。

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眞鍋海里さんが手掛けた、密室お化け屋敷『訪問者』

Part4.「話題になる」の本質とは?

―ここまでいろいろな視点から「話題になる」ことについて考えてきましたが、そもそも「話題になる」とは何なのでしょう。

刀田:『話題になる』という中身にもいろいろあって、「メディアにたくさん取り上げられた」というものと、「実際に人々の間で会話になる」とはまったく意味が違いますよね。よく、アワードのエントリービデオ内で、キャンペーンの結果や効果として「メディア露出量」が出てきます。また、取材を依頼される立場としても「こんなにたくさんメディアに取り上げられたから話題なんです、取材してください」とお話をいただくことがありますが、そういったケースに限って、実際に周りに聞いてみると、知られていないことも多いように感じるんです。

森下:マスメディアにたくさん取り上げられたことが、会話につながるとは限らないというのは、実感としてありますよね。とはいえ、一方でテレビに紹介されるとその店に行列ができる......という分かりやすい現象もあるので、完全否定はできないです。

―あとは、「WEBメディアで取り上げられる・SNSで拡散される」というのも『話題になる』という意味で使われるケースはありますよね。お二人も日々、取材記事をWEBに上げていらっしゃるので、顕著に感じられていると思いますが、たとえばPV数が多い記事にたくさん「いいね!」がつくかというと、必ずしもそうではないですよね。

森下:その逆(「いいね!」が多いがPV数が少ない)もありますよね。

刀田:面白いですよね。クライアントによっては、「いいね!」数を指数にしているところもあると聞きます。

森下:「WEB上で拡散する」という点でいうと、先日、とある企業の広報責任者の方にいいお話をいただきました。WEBメディア上の転載記事とオリジナル記事ではまったく価値が違うのに、全体として一緒と見なされて、「WEBで200~300媒体出ました!」と、それを成果としてしまうのは本質的な効果指標とは違うんじゃないの?どこかでつじつまが合わなくなるのでは?と投げかけていて、まったくその通りだなと。効果測定も企業によって課題が違うので難しいですが、話題になったことの本質を見極めるのは、すごく大変かつ大切なことだなと思います。

―「WEBで話題になる」という意味でも「いいね!」数なのか、PVなのか、閲覧時間なのか、読了率なのか、など、さまざまな指標が考えられますよね。

森下:広報部としてはもちろんですが、指標を明確化すれば、それを念頭に置いて毎回面白いコンテンツをつくろうと、クリエイターの方が考え方を変えることもあるかもしれないですよね。広報とクリエイティブが連携すればするほど、この指標というか、成果の部分が求められていくように思います。あと、短期的な視点で効果を判断してほしくないですね。継続することで出る成果もあるので。それを高めるためには、最初のディスカッションで出たように、メッセージの一貫性が必要になってくる、ということなのでしょうね。

刀田:「もはや一言で『話題になる』という表現ではなく、違う言葉を発明した方がいい。そう言っていた方がいて、その通りだと思いました。

―少し整理すると、「マスメディアで取り上げられる」「WEBメディアで取り上げられる・SNSで拡散される」「実際に、人々の間で会話になる」というように、同じ『話題になる』という言葉にも、さまざまフェーズ(段階)があるということですね。これからは、それぞれの相関関係も考えていかねばならないですね。キャンペーンの目的ごとに、何を目標にしていくのがベストなのかを考える必要もありますし。若者に対して訴えるのであればテレビ以外の施策が有益かもですが、シニア向けだったら、テレビに勝るコンテンツはないでしょうしね。

刀田:その通りですね。皆が「マスメディアに取り上げられる」ためだけに労力を注ぐのは、誰も幸せにならないですよね。奇抜なことをやれば取り上げられるかもしれませんが、結局、取り上げられただけで、売り上げにつながらない、ファンにもなってもらえない、となってしまったら意味がないですよね。

森下:とはいえ、中小企業やニッチな製品などは「まずはマスメディアに取り上げられる」効果はあると思います。知名度ゼロなわけですから、マスの影響力をもってしてニーズのある人に届いたら意味がありますよね。

刀田:商品によっては、量が質を生むということですね。

―日々、メディアの状況が変わっていく中で、たったひとつの成功の方程式はないということですよね。目的やターゲットに合わせて、柔軟に、ニュートラルに施策を考えることが必要ということですね。

Part5.来年注目の手法・トピックスは?

―最後に、2016年に注目している分野や、コミュニケーション手法があれば教えてください。

刀田:来年もさまざまな"越境"に期待しています。特に「空間×テクノロジー×クリエイティブ」の組み合わせには可能性を感じています。デジタルとリアルが別物でなくなってきていて、プロジェクションマッピングやリアルな空間におけるデジタル体験が増えてくると思います。

森下:おそらくそれが結果的に、バズっぽいことをしたい、というのにつながりますよね。

刀田:広告主の発注する先も広がっています。映像制作会社がプロモーション出身者を採用したり、イベント会社がデジタルクリエイティブの企業と組んだりと、領域の異なる人たちが、同じ場所を目指し始めている気がします。実際「ブレーン」の誌面にも、いわゆる広告クリエイターではない人もよく出てくるようになりました。面白いコミュニケーションを仕掛けている人であれば必ずしも広告クリエイターである必要はないのですよね。むしろそれを見て、いい意味で焦りを生めたらいいなと(笑)。

森下:そうですね。PRの領域で言えば、メディアリレーションありきでないPRの価値をどう作り出していくのか、という話でしょうね。たとえば最近、企業のコンテンツ資産をまとめたもの(社内イベント、ミュージアム、工場見学)をリニューアルしているところが増えているように思います。コンテンツの棚卸しをして、クリエイティブや企業コミュニケーションに生かしていくのは、PRの領域の新たな取り組みでしょうね。

刀田:企業ミュージアムは"リアルオウンドメディア"ですよね。そこでできる体験が本当によいものであれば、訪れた人がどんどん勝手にWEB上にアップしてくれる。だから必ずしも「オウンドメディア」がWEBである必要はありません。そこは体験の質の問題であり、デジタルかリアルか、というのはあまり関係ないですよね。

―テクノロジーが進んで、誰もがコンテンツをつくれる時代になったがゆえに、「何を出すか」というところの"質"が大切ですよね。良いコンテンツは自走していってくれるので、それをどういう表現にしていくのかが、これから楽しみであり、工夫のしがいがあるところですね。

刀田:はい、その手段として、今はWEB動画が多く用いられているということなのだと思います。来年も何が出てくるか楽しみです!

森下:良いコンテンツが生まれると、社員や市民も誇りが持てたり、モチベーションが上がったりするので、やはりそこを追求していくべきですよね。

―ありがとうございました!

(聞き手:タカス・マセ)

■プロフィール



20151224_digitalboard_04.png森下郁恵(もりした いくえ)

「広報会議」編集長。上智大学文学部新聞学科卒。2004年宣伝会議入社。『編集会議』『宣伝会議』編集部などを経て、2014年4月から現職。企業の広報・宣伝・マーケティング活動などを中心に取材・執筆多数。担当書籍は『デジタルPR実践入門 完全版』など。来年は、コミュニケーション業界を担う次世代の発掘に注目!





20151224_digitalboard_05.png刀田聡子(とだ さとこ)

「ブレーン」副編集長。慶應義塾大学環境情報学部卒。2003年宣伝会議入社。広告クリエイターを中心に、さまざまなクリエイティブ分野の取材・執筆を重ねる。2014年ブレーンのオンライン動画コンテスト「BOVA」立ち上げに携わる。担当書籍に『ブレーン 特別編集 合本 トップクリエイターのアイデア発想法・企画プレゼン術』など。

来年の注目は、「スポーツ×クリエイティブ」!

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

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