2次元と3次元の間!? 「2.5次元ミュージカル」の魅力とは

週刊?!イザワの目

2015/10/01週刊?!イザワの目

『NARUTO-ナルト-』『DEATH NOTE』『美少女戦士セーラームーン』『テニスの王子様』――。いずれも世界中で人気の日本の漫画・アニメである。実は今、これらをミュージカル化した、通称「2.5次元ミュージカル」が好調だ。この数年で公演数、動員数共に増えており、2014年は年間上演作品数が91作品、動員数128万人となり、各方面から注目を集めている。人々を惹きつける2.5次元ミュージカルの魅力と、その戦略に迫った。

IMG_7959.jpg

なかよし60周年記念公演 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Un Nouveau Voyage- (アン ヌーヴォー ヴォヤージュ)

©武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2015

※編集部撮影

2.5次元ミュージカル・ルポ

渋谷にある「AiiA 2.5 Theater Tokyo」。ここは、「2.5次元ミュージカル専用劇場」だ。

先日、なかよし60周年記念公演 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Un Nouveau Voyage- (アン ヌーヴォー ヴォヤージュ)の公開ゲネプロ(通し稽古)が行われた(東京公演は終了。10月2~4日大阪・サンケイホールブリーゼで公演)。

幕が上がり、まず驚くのはその再現性だ。漫画で見るのとまるで同じセーラームーンが登場する。舞台でどう表現するのだろうと思う変身シーンや必殺技も、光や音、そして舞台装置を巧みに使って表現する。クライマックスのスーパーセーラームーンへの変身シーンはキャストの歌と踊り、舞台の光と音、装置をフル活用して表現しており、鳥肌ものだ。

「2.5次元ミュージカル」の呼称は「漫画・アニメ・ゲーム(2次元)が舞台化されたもの(3次元)」という意味で、ファンの間で自然に発生したとのことだが、それも納得できる。舞台という制約された空間の中で、いかに原作のもつ世界観を崩さずに作品を成立させているかという視点で観るのも一興だ。

2.5次元ミュージカルの楽しみ方は人それぞれ。原作のファンもいれば、キャストを追いかける熱狂的なファンもいる。舞台を観て、それまで注目していなかったキャラクターや俳優を好きになることもあるという。

単に漫画やアニメ、ゲームファンのためだけのものでないのが、2.5次元ミュージカルの魅力だ。

IMG_8095.jpg

渋谷にある2.5次元ミュージカル専用劇場「AiiA 2.5 Theater Tokyo」

※編集部撮影

ジャンルの確立、そして海外へ

とはいえ、まだ認知度は高くない。そこで、2014年3月、「一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会」が発足した。客層は主に20~30代の女性が中心だが、それを男性や家族連れ、外国人にまで広げていきたいと考えている。

「協会の大きな目標の一つは、国内で『2.5次元ミュージカル』というジャンルを確立することです」と語るのは、日本2.5次元ミュージカル協会広報の遠田尚美氏。「現在、市場が広がっているなか、一過性のブームではなく、しっかりとしたジャンルに育て上げることが認知にもつながると考えています。協会には舞台制作会社や芸能プロダクションなどのエンタメ関連企業だけでなく、TV局、観光業など多種多様な会社に加盟していただいており、まさに『ALL JAPAN』で2.5次元ミュージカルを盛り上げようという体制になっています」

世界への発信も目標だ。最終目標は海外進出だが、「まずはインバウンド」と遠田氏。渋谷区の観光案内所やホテルなどにチラシや公演案内を配置したり、専用劇場では最大4言語に対応した字幕メガネを完備したり、海外からチケット購入を可能にしたりと、日本に来る外国人観光客が気軽に観劇できる仕組みづくりをしている。

「小さい頃から日本のアニメを見て育った欧米の方が観劇して熱狂している姿を見ると、日本の漫画・アニメ・ゲームの舞台化は、世界でも戦えるコンテンツだと感じます」と、2.5次元ミュージカルの可能性はもちろん、改めて原作の持つ「力」にも気づかされるという。

着用鑑賞時.jpg

最大4言語に対応した字幕メガネ

原作の再現へのこだわり

2.5次元ミュージカルが支持を得ている理由とはなんだろうか。

遠田氏は「原作の漫画・アニメ・ゲームの人気や知名度もありますが、原作をこよなく愛し、よく知っている方々に楽しんでもらえるレベルのクオリティにすることを最重視しているからだと思います」と語る。

たとえば、キャスティングでは、役者の見た目が似ているという視点だけでなく、中身にキャラクターの"種"があるか、つまり性格などがキャラクターに合っているかということまで考慮に入れている。また、演出方法も作品によって工夫。ミュージカル『テニスの王子様』ではテニスの球を光で表現したり、舞台『弱虫ペダル』では、自転車のハンドルを持った役者の動きだけでロードレースを表現したりと、作品に一番合った方法を考え抜いている。この変換が重要だという。

こうしたクオリティへのこだわりが原作ファンを2.5次元ミュージカルのファンにし、SNSなどを通じて原作ファン以外のファンも増やしている。

遠田氏は今後について、こう語る。「2.5次元ミュージカルの客層は今までお芝居を観に行ったことがない若い世代が多く、この観劇をきっかけに、そこから演劇に興味を持ったり、お気に入りの俳優を見つけた人が、2.5次元ミュージカル以外の舞台を観に行っていることもあります。最近はお芝居好きの方の間でも、2.5次元ミュージカルが話題になることもあるようです。日本人は観劇の習慣が欧米に比べ少ないですが、2.5次元ミュージカルが日本の演劇市場の変化のきっかけとなり、活性化にもつながっていくと思っています」 

新たなファンを増やすには、まず既存ファンを大切に―。コンテンツづくりでファンの心を捉えるには、一つ一つのこだわりが大切なのだ。神は細部に宿る。今後、2.5次元ミュージカルのファン増殖は間違いない。これからますます目が離せない。

弱虫ペダル.jpg

舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER

©渡辺航(週刊少年チャンピオン)2008/弱虫ペダルGR製作委員会

©渡辺航(週刊少年チャンピオン)/マーベラス、東宝、ディー・バイ・エル・クリエイション

テニスの王子様.jpg

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs聖ルドルフ

©許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト

©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

---------------------------------------------------------

2.5次元ミュージカルとは

2次元で描かれた漫画・アニメ・ゲームなどの世界を、舞台コンテンツ化したものの総称。漫画・アニメ・ゲームを切り口としたことで、従来のミュージカルファン・アニメファンだけでなく、普段ミュージカルに足を運ばないような層にも人気を広げている。また、海外から訪れるファンも増えており、2014年の延べ動員数は128万人となっている。

古くは『ベルサイユのばら』(1974年)などの作品が2.5次元ミュージカルの原点と言われており、2003年初演のミュージカル『テニスの王子様』(通称「テニミュ」)がブームの火付け役となった。

2015年3月中旬から、渋谷の「AiiA 2.5 Theater Tokyo」が2.5次元ミュージカル専用劇場となる。

※文中で言及されている年間上演作品数、及び動員数は、すべてぴあ総研調べによる。

(文:ノッシー/写真:タカス)

この記事を書いた人

週刊?!イザワの目
Editorial department

2011年10月20日創刊。
電通PRの若手社員による、電通本社および電通グループを対象に配信しているメールマガジン。2012年11月に全面リニューアルを果たし、現在は瓦版スタイルで発行中。国内外の旬なPR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人のインタビューが人気。2014年3月、満を持してマイクロサイトに登場! オリジナルコンテンツなどもアップしていきます。

TOP