デジタル時代の企業広報にかかせないメディアの役割 VOL.8

情報流通構造

2014/03/04黒澤 光

-いま最も注目されているニュースキュレーションアプリ「SmartNews(スマートニュース)」(後半)

スマートニュース社のこれまでの取り組みや今後の展開について、また、この情報環境時代において、企業広報におけるメディアとの取り組みに必要とされる要素など、引き続き、藤村氏よりお話を伺います。

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-「SmartNews」のこれまでと今後について

黒澤光(黒澤):SmartNewsの収益モデルについてはどのような計画をされていますか。

藤村厚夫(藤村):成功しているウェブサービスやプラットフォーム型ビジネスには、ある程度の規模になった段階で、マネタイズモデルを開始するというパターンがあるのではないでしょうか。SmartNewsでも、アイデアとしては、課金モデルや広告などは検討していますが、現時点では最優先ではありません。

黒澤:多くのメディアとの提携モデルについて教えてください。

藤村:SmartNewsの基本コンセプトは、"コンテンツに特化した検索エンジン"と"コンテンツを最も快適に読むブラウザ"の再発明です。重要なのはコンテンツであるため、そのコンテンツホルダーである媒体社とよりよい関係(メディアパートナー)をつくることで、お互いのビジネスを高めあうことができるであろう、と思っています。

そのために、パートナーへ提供できるメリットをいろいろと用意しています。「SmartNews 内アクセス管理ツールの提供」「メディアロゴや媒体社の指定する広告の掲出」「関連記事リンクの整備」などです。現在は100媒体以上と提携・協業が進行しています。

メディアパートナーの中でも、ユーザーからの支持の強いメディアとは、「チャンネルプラス」という協業を行っています。これは、SmartNews内に特定メディア専用のチャンネルをユーザーが追加できる機能です。チャンネルプラス購読者総数(購読数を重複カウントする)は500万を突破しています。

【チャンネルプラス】

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黒澤:現在は協業関係にあるような媒体社との間でも、初期にはSmartNewsによる記事の取り扱いについて、懸念や批判の声が上がりましたが。

藤村:サービス立ち上げ時においてそうでした。説明不足だったり乱暴だった点は会社全体として反省し、それが現在のメディアパートナーとの協業施策に反映しています。ポイントは、パートナーとしてどう良い関係を作り上げていくかです。ご説明したようなパートナーにとってのメリットを積み上げ、極力ていねいに1社ずつ説明し理解を得るよう努力しているところです。現在では、ありがたいことに、毎日協業についてのお尋ねがあり、リクエストへの対応に追われている状態です。

黒澤:ずばり、SmartNewsのライバルはどこになるのでしょうか。

藤村:隙間時間などをゲームなどに充てている人にニュースを読んでもらいたいと思っています。その意味では、他のニュースアプリが競合というよりも、スマホ接触においてゲームに取られている時間をニュースへシフトさせる闘いだと考えています。

黒澤:今後の展望についてお聞かせください。

藤村:300万ユーザーには到達しましたが、目標はそのはるか上です。未来のポジショニングとして、モバイル大国の日本市場でトッププレイヤーになることは当然ですが、それと同時に海外展開もめざしたい。幸いソーシャルメディアを解析する、言語依存しない技術を優位性として持っています。海外展開は今年以降の重要なテーマの一つです。

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-情報環境変化が激しい時代における企業広報のあり方について

黒澤:デバイスの進化やウェブ普及による情報過多な時代と言われておりますが、その中での懸念や企業広報のあり方についてどのように見ていますか。

藤村:消費者は商品やサービス、そして情報について自由な選択肢を持てるようになりました。その意味で、情報を提供する側が消費者をコントロールできる余地は劇的に少なくなりました。"消費者自らが何をどう選ぶのか"が重要な時代へと、インターネットはもちろん、社会の仕組みそのものが大転換を遂げています。ところが、サービスや情報を提供する側のビジネススタイル、思考法が従来のままでは、消費者の求める方向とは異なってしまいます。その点で、"消費者自らが何をどう選ぶのか"を最重要な原理とした上で、情報の流通はもとより、あらゆる商品やサービスを提供する仕組みを作り直すべ  き、というのが私の考えです。個人的にも、それをどう作れるのか試行錯誤をしてきましたが、SmartNewsは最良の答えのひとつだと思っています。

黒澤:そのような中で企業広報の対応について。

藤村:情報(企業コンテンツ)を潜在的に求める消費者にきちんと伝えるためには、複雑で硬直化してしまった従来の情報流通モデルの下では難しくなっています。これからは一つの方程式だけでは解決できません。

タイミングや状況といった、消費者の"いま・ここ"という文脈に適合した情報流通モデルを作らなければなりません。届けたい消費者に対してどのように情報を届けることができるのか、それを実現するためには、まずその消費者がどのような情報を求めているのか"傾聴"するといったことが大事でしょう。ソーシャルメディアの隆盛は、そこに新たな可能性を導きました。また、あらためて良質なコンテンツが持つ力も見直されていることは、 "コンテンツマーケティング"という言葉がキラーなものになってきたことでも明らかです。そこには広告やPRといった手法上の境界はなく、消費者が欲しいと思っている情報(コンテンツ)や、その消費のスタイルをどうやって提供できるか、くどいようですがそれが重要なことだと思います。

黒澤:今後の動向について。

藤村:人それぞれにさまざまな文脈があります。ビジネス上の興味関心を持つ時間帯(状況)や、夜お腹がすいた時間帯(状況)など、リアルタイムかつ出現してはすぐに消えていくといったスピード感でその文脈が回っています。従来型の固定的な情報発信では追いつかない時代なのです。これからは情報流通というマーケットにおいて、消費者の文脈や小さなニーズの変化にキメ細かく追随できる仕組みを考えたり、戦略的な視点をもった人たちが成長できる時代になるのでは、と予測しています。

黒澤:本日は、貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材:スマートニュース社)(敬称略)

この記事を書いた人

黒澤 光
Chief Communication Designer

デジタルコミュニケーション室/デジタルソリューション部長
2004年から電通グループのデジタル関連企業(PC/モバイルのメディアプランニング)に所属
2007年より電通PRに所属し、デジタルPRの体系化を推進
2010年から2年間、電通グループデジタル領域を統括する関連会社(電通デジタルホールディングス/DDH)へ出向
現在、通信/IT/食品/飲料のクライアントを中心としたデジタルを基軸とする、PRプランニング活動およびソリューション開発に従事

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