【転食活動vol.1】都築響一さん、面白い企画って何ですか?

企画のヒント

2014/01/31石井 裕太

転食活動第一弾は、都築響一さん。

都築さんは、日本が誇る希代の名編集者であり名写真家だが、僕にとっては、「かつて誰も考えつかなかったことを、企画して実行してしまう希代の名プランナー」だ。日々、国内外の取材で多忙を極める都築さんだが、連絡するや否や快くお時間を頂けた。場所は、これまた超希代の名スナック『アーバン』@荒木町にて。

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都築響一氏(撮影:吉永マサユキ)
編集者、写真家。56年東京生まれ。学生時代より『POPEYE』の創刊に携わり、現代美術・建築・デザイン・都市生活などの記事を担当。以来、執筆活動や書籍編集の他、幻のクラブ『芝浦GOLD』や『恵比寿MILK』、最近では、新丸の内ビルにある淫靡スナック『来夢来人』の空間プロデュースを行ったりと、世に出した作品は枚挙に暇がない。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』発刊。97年、『ROADSIDE JAPAN』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界各地のロードサイドを巡る取材を続けている。
2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS'weekly』を配信中。 

都築さんは、全国各地にあるスナック、ラブホテル、秘宝館、ラッパー、暴走族など、"当たり前のように既にそこにあるもの"を掘り出しては意味付けをして、新たな視座とさまざまな価値を世に問うてきた。

<日本人はアマゾンにもサハラ砂漠にも旅へ出るけど、誰も知らない何もない日本の田舎こそ、一番の秘境かもしれない。日本の地方はだれもが知っているつもりで、実はなにも知らない。地方にこそ、不思議に刺激的で楽しい隠れ名所の数々がある。>

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刺激的でヤバい旅は海外にある。『猿岩石』や『深夜特急』など、どの番組もどの本もそう言っていた時代に、<都築響一>は僕にとってものすごい衝撃だった。以来、15年間ほど、都築ファンのひとりとして、著書を貪り読み、作品集を買い集め、個展に出向いた。そして今、都築さんは、それらほぼすべての活動を、メールマガジンに集中させた。なぜか。

ここ何年か、ご本人と接点をもつ機会にも恵まれたが、今回はじめてきちんと(ほぼシラフで)いろいろとお話が聞けたので、その放談のほんの一部だが、下記に紹介したい。

企画≠編集会議

面白い企画はね、会議じゃ絶対生まれません。僕は『POPEYE』に5年、『BRUTUS』に5年、それぞれの創刊時から関わっていましたけど、10年間1度も編集会議は開かれなかったですね。編集会議って、みんなが良いと思う企画をプレゼンして、アイデアを潰し合うものじゃないですか。で、やりたくもない企画を担当するでしょ。まずそこでモチベーションが壊れる。例えば、ニューヨークが面白い!と思って、企画会議でプレゼンするけど、それは誰かが既にやったことだからプレゼンができるわけでしょ。説得材料がもうあるんだから。そうじゃなくて、取材も企画も、<自分が本当に面白そうだと思うからやってみる>に尽きる。企画と編集会議は、根本的に合わない。特に最近は、広告代理店の人とかが編集会議に入ったりして、主導権争いになることも多いし、さらに味気なくなっちゃったよね(笑)。

面白い企画=自分にとってのリアル

例えば、ニューヨークでいろんな友達や知り合いをつくって、彼らの家に遊びに行ったり寝泊まりを繰り返していると、本当の彼らの生活が自ずと見えてくるんだよね。でも、どの雑誌のニューヨーク特集を見ても、おしゃれなインテリアやカフェばかり。専門家に言わせると、それがニューヨークと言うけれど、でも全然リアルじゃない(笑)。
専門家は知識はあるけど、こっちにはフットワークがある。専門家が「こうだ!」と言っても、現場を観ているこっち側からするとそれは全然違う。「違うよ」と言い返すには、ひたすら現場に行くことを繰り返す。それ相応の努力をしていれば、自ずとリアルが見えてくる。資料は二次情報。一次情報は必ず街にあるんですよ。
パークハイアットは一生行くことのない人がほとんどだけど、ラブホテルはほとんどの人が行ったことあるじゃないですか。だから、リアルなラブホをテーマに、みんなが面白がれる特集を組もうという企画が生まれる。結局、専門家の言うことに対して、耳を塞ぐトレーニングは自分でするしかないんですよね。

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客<自分

雑誌で最初に教わったのは、「絶対に想定読者をつくるな」ということ。想定読者はお前だよ、と。「30代独身女性の気持ち」は一生かかっても分かるわけがない。読者は自分。データをひっぱってくるのは、自分に自信がないから。それじゃ、新しいものは生まれない。とことん自分が面白いと思うものを突き詰めるしかない。良い料理人は、会ったこともないお客さんがどんな料理を食べたいかという統計でメニューを考えているわけではなく、いま一番美味しい魚を一番美味しい食べ方で出すこと。つまり、自分で一番食べたいものを出す。そこにお客さんがついてくる。ただそれだけ。

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ネット=個人の味方

一昨年に、各誌の連載を全てやめて、メルマガ一本に絞りました。別に、メルマガをやりたかったというわけではなく、雑誌でやりたいことがやれなくなったから。個人が定期的に少額の課金をしていくシステムがなかった時は、ブログでトレーニングをして、ネットの世界を勉強していました。そして、ようやく環境が整ったから、雑誌の連載を一切やめて、メルマガに集中した。好きなだけページをとれて、好きなことを書ける状態になるのをずっと待っていた。今や、人生の95%以上をメルマガに費やしていますよ(笑)。
ネットはトレンドというものをなくしたんじゃないですかね。トレンドを商売にしてきた人にはすごく難しい時代。でも、何かをやりたい人には、これ以上のチャンスはないとも言える。去年、メルマガで僕が紹介した面白かった書籍や作品集は、ほとんどが自費出版だったしね。

都築さんのメルマガで連載している写真家のひとりに、電通・地方支社勤務の社員がいるという。
「今の時代、本社のエリート電通マンじゃなくて、地方支社の、特に島流しにあったような電通マンとかグループ会社の人たちとか、くすぶっている人の方が、エネルギーがあって、絶対面白いと思うなぁ。そういう人たちが結束して、いまの時代に合った『新・鬼十則』をつくれば、いろんなことが少しは面白くなるんじゃない? (笑)」 都築さんは、水割りの入ったグラスを傾けてぐいっと飲み干した。

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【店舗情報】

『アーバン』

編集者、漫画家、作家、俳優、アーティスト、デザイナーたちが毎晩ごった返すスナック『アーバン』では、はるかママが水割り片手に出迎えてくれる。そして、『アーバン』を訪れる前に是非立ち寄りたい荒木町のお店と言えば、『たく庵』。若板前の小原さんが、日本酒一升瓶片手にお出迎え。

この記事を書いた人

石井 裕太
Senior PR Planner

2001年入社。“あらゆるメディアをいじれる”というコミュニケーションビジネスだけがもつその魅力に惹かれ、マスメディアから個人メディアまで、広告から編集まで、アナログからデジタルまで、文化芸術からテクノロジまで、まだ見ぬ未踏の地に分け入っては、クライアントの課題解決のしくみづくりとアイデアを企てる毎日。
仕事は、オリンピック・パラリンピック、FIFAワールドカップ、国際映画祭、国際博覧会など何かとお祭り仕事のプランニングやディレクションが多い一方、もっとも長く携わっているのは、飲料&外食産業関連クライアントのコミュニケーションデザイン。

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